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第2話
「良いよ、ほら」
廉佳がベッドの下の収納スペースから茶封筒を取り出して、その中に入っている漫画の原稿を差し出してくれた。
「ありがとー」
泰志が受け取った原稿用紙を覗き込むと、予想していたよりはるかに整った絵が目に飛び込んできた。学園ものとみられるその漫画は、いかにも優等生といった黒髪の少年と、そんな彼とは正反対の金髪の少年が主な登場人物のようだ。
「うわ、下手とか言ってたのに全然そんなことないじゃん。フツーに上手いよ」
言おうとしていたことを泰志が先に言ってしまったので、千世はうんうんと頷く。キャラクターは表情豊かで生き生きとしているし、背景の描き込みもしっかりしている。
漫画に関しては素人の千世でも、廉佳のものが下手ではないとすぐに分かった。
「僕も、廉佳さんの漫画上手いと思うよ」
廉佳のことを子供の時のまま「廉にぃ」と呼ぶ泰志とは違い、千世は中学に上がったあたりからは気恥ずかしくて「廉佳さん」と呼んでいた。その頃には既に彼をただの幼馴染みとして見られなくなっていたせいもあるが。
「うーん、実はその漫画、あるレーベルの新人賞に応募したら最終選考で落ちちゃってさ」
「え、そうなの?」
千世が二十年かかっても描けなさそうなものが、最後の最後で落選してしまうなんて。
「講評貰ったんだけど、『画力はあるが設定にオリジナリティーが足りない。キャラの心情をもっと丁寧に描写した方が良い』だってさ」
「へぇ……」
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