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第11話
「千世にぃにはいくら可愛いって言っても足りないよ。食べちゃいたいくらい」
「な…何言っ――んんッ」
千世の言葉が最後まで紡がれることはなかった。その代わり唇に柔らかいものが触れていて、色の薄い泰志の髪が千世の顔にかかってくる。
キスされたのだと気付くまで多分五秒はかかってしまった。
千世は衝撃のあまり何のできず、それを受け容れてしまう。
「……――ん、はっ……え?」
泰志が身体を起こす。明るくなった視界に、彼のにんまりとした顔が映った。
「今の、俺のファーストキス。千世にぃもそうでしょ?」
「あ……うん」
(なに普通に返事してるんだ僕はっ。呆気に取られてる場合じゃないよ、大事なファーストキスが弟だなんて)
「もう泰志最高! ごちそうさまです!!」
(何か知らないけど、廉佳さんのテンションすごく上がってるし……)
弟に反抗してやりたいという気持ちも、熱狂した廉佳に気圧けおされて引っ込んでしまった。
「廉にぃ、こういう感じで良いの?」
「ああ、その調子でやってくれ! 二人にモデル頼んで正解だったな~」
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