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第10話

「千世、手を退けてくれないか? できる事もできないだろ」 「っ、うぅ……」 (僕だけ脱がされるなんて恥ずかしいけど、これは廉佳さんのためだし……。あぁもう、やるって決めたからにはやってやる!)  覚悟を決めるというより自棄になった千世は、横を向いていた身体を完全に仰向けにし、抵抗するのを諦めた。  それでも羞恥は拭いきれず、赤面した顔を隠すように俯く。 「お、その表情いいな。なかなか絵になってるぞ」 「……僕、どんな顔してるの……?」 「うん? 真っ赤になって、諦めと悔しさが混ざった感じで、恥ずかしくて仕方ない――って顔」  千世の複雑な感情をスパスパと言い当てる廉佳に恐ろしさすら覚えた。『キャラのもっと感情を丁寧に描写した方が良い』という講評を貰ったとは思えない。  それだけ千世の気持ちを理解しているくせに漫画に活かせないのは何故だろう。多分、それが改善した時廉佳の漫画は更に面白くなるはずだ。 「千世にぃはいつも可愛いけど、そういう顔もすっごくイイね」 「お、男に可愛いとか……別に嬉しくないよ……」  いつも格好いいとちやほやされる泰志とは逆に、千世は大学生になった今でも周りから『子供っぽい』と言われてしまう。そのせいで小粋な弟や廉佳への憧れは増す一方だ。

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