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第9話
「二人とも、そろそろ役に入ってくれないか? 泰志は千世のことセンパイって呼んでみてくれ。後は取りあえず泰志の好きにしていいぞ。適当に俺が指示を出すから」
どうやら廉佳は本当に初めて同士の二人に任せて、その初々しさを絵に残したいようだ。
「ははっ、緊張しちゃうね。セ、ン、パ、イ」
「~~ッ」
呼び慣れない呼称に背中に悪寒が走る。たった一言『センパイ』と言われただけなのに、違和感の塊を投げつけられたかのようだ。
(もぅ、泰志はすぐ悪ノリするんだから……)
こうなった泰志にはもう手がつけられない。彼は気の済むまで千世の身体を弄ぶだろう。
「ほらセンパイ、こっちに集中して」
「ぅえ? あ、う、うそっ!」
気が逸れた隙に下着に手をかけられる。次に起こることを予想して泰志の手を掴もうとしたが、彼の方が素早かった。
「わぁああぁああああ!!」
あまりの出来事に絶叫しながら、千世は身を丸めて全身で防御の姿勢をとった。
(廉佳さんが見てるのに……。いや、モデルなんだから見られて当然か。でも恥ずかしくて今すぐ消えたいよ……)
「隠さないでセンパイ。これからもっとすごいことするんだから、見せてくれても良いんじゃない?」
(泰志も泰志で、そういう事どこで覚えてくるの?)
弟の色事が気になる千世だったが、廉佳は依然として容赦がない。
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