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第8話
一方の廉佳はページを変えて何枚もスケッチをしているし。どれだけ描けば気が済むのだろう。
「――はい、もう動いていいぞ」
許しが出ると同時に、額に柔らかいものが触れた。
「んっ……」
咄嗟に首を竦め、その感触をやり過ごす。
「やっぱ可愛いなぁ、千世にぃは」
「泰志……な、なにして……」
「俺悪いことした? 廉にぃからデコチューするように言われただけだけど」
そう出られると反論ができない。確かに泰志は指示されたことをしただけだ。
「それにさ、あのままキスしない方が勿体なかったって」
「よく分かってるじゃん、泰志。なら次はズボン脱がせてみようか」
「なっ……一体どこまでやればいいの?」
「うーん、やれるとこまで?」
「答えになってないよ!」
「はいはい、千世にぃは暴れないで~」
「あっ、待って――」
泰志の方から気が逸れていたせいで、あっという間にジーンズを下ろされてしまった。
「っ!」
羞恥のあまり涙が出そうにる。好きな人の前で下着一枚にされてしまうなんて。
それを指示した張本人が『好きな人』だから、もどかしさばかりが募っていく。
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