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第30話
「もうお婿に行けない……」
「あはは、何言ってんの。俺のお嫁になればいいじゃん」
「え?」
「――なんちゃって。冗談だよ」
「そ、そうだよね。もう……止めてよ」
泰志が冗談を言うことはままあるが、この手のものは初めてだ。
昨日、廉佳の家に行ってから泰志の様子がいつもと違う気がしてならない。だが彼は何事もなかったかように振る舞っているつもりらしいので敢あえて伝えはしなかった。
「あれ、僕いつの間に着替えたんだっけ」
泰志が寝間着 のスウェット姿だということにようやく気付いて千世も自分の服装を確認した。すると昨日着ていた服ではなくパジャマに着替えさせられていて。
「あ、服とかは全部替えといたから。千世にぃもっと太った方が良いんじゃないの? 運ぶとき軽すぎて心配になっちゃったよ」
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