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第167話

 代償どころか廉佳もデートがしたいと思っていたなら千世がコスプレをしてまでお願いすることでもなかった。そのことに今更気が付き、千世は手の中でテーブルクロスをぐしゃぐしゃにする。 「どうしたの?」 「別に……。僕のコスプレ写真、削除しておいてね」 「あ、もう廉にぃに送っちゃった」  千世の口から溜息が漏れる。今日は色々あって疲れた。  しばらくして作業も片付き、千世たちは会場を後にした。朝から手伝ってくれていた廉佳の友人とも別れ、いつも通り三人で道を歩く。周りを歩く女性たちはみんなパンパンになった鞄を持って疲労している様子が目立つが、どこか清々しさも感じる。  あんなに騒がしかったイベントも、終わってしまえばあっという間だったな、というのが素直な感想だった。 「二人とも、今日はありがとな。お礼に何か奢るよ」 「やったー! なら肉が良い! 焼き肉行こう」 「や、焼き肉か……良いだろう。好きなだけ食え!」  眉間に皺を寄せた廉佳だったが、食べる量の多い泰志と少ない千世の分を合わせれば丁度二人前くらいなので首を縦に振ってくれたのだろう。 「いっぱい食べようね、千世にぃ」 「うんっ。でもあまり廉佳さんを困らせちゃ駄目だよ」  こうしていると、やっぱり三人でいるのが一番楽しいのだと自覚する。廉佳と泰志といれば笑いが絶えない。こんな時間がいつまでも続けば良いな、なんて夢を見たりしてしまう。

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