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第166話

 イベント終了を告げるアナウンスが会場に響き渡ると、あちらこちらから拍手が聞こえてきた。こういうところも一体感があって良いなと思う。  あれから三十分ほどでめでたく本が完売し、コスプレ衣装から着替えた千世はスペースの撤収作業を手伝っていた。 「千世にぃ、廉にぃ、ただいまー」  そこへ買い出しに行っていた泰志が戻ってくる。その手元には二十冊ほどの薄い本が抱かれていた。 「おかえり。結構買ってきたんだね」 「いやいや、これでも三分の二くらいだから」 「え……」  廉佳の思わぬ一面を見てしまった気がして、千世は口を半開きにしたまま立ち尽くす。すると背後から廉佳が段ボール片手にやって来た。 「おお、ありがとな泰志。それだけ買えれば上々だ」 「そお? なら良かった。もうさ、行く先々でじろじろ見られちゃって『腐男子なんですか?』って聞かれたりしたんだけどよく分かんないから『そうかも~』って答えちゃった」 「そこは否定すべきなんだろうが、まあいっか。とにかくありがとう」  戦利品を受け取った廉佳は慎重な手つきでそれをリュックサックにしまいに行った。その顔がにやけていたことには気付かない振りをしておく。 「千世にぃはコスプレ止めちゃったの? 勿体ないなぁ」 「もうあの格好は二度としないよ……」  その代わり、今度廉佳にデートに連れて行ってもらうのだ。それを考えれば今回のコスプレも安い―― (いや、かなり高い代償だったかな……)

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