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第165話

「廉佳さん、泰志にも手伝えることはないかな? せっかくだから泰志にも楽しんでもらおうよ」 「千世がそう言うなら…………そうだ、お使いを頼んでもいいか?」 「任せてよ。何買ってくんの?」 「今回本買うのは諦めようと思ってたんだけど、この際だから泰志に頼むわ。今サークルの名前書くからちょっと待ってて」  ウエストポーチからメモ帳とペンを取り出した廉佳はテーブルの端で目当てのサークルを書き始めた。その間に泰志にそっと、良かったねと告げる。  彼はここに居たかったようだが、聞き分けの悪い子供ではない。泰志も会場を見て回るのも楽しそうだと言ってくれたので一安心だ。 「はいこれ、メモとお金。パンフも渡しとくな、地図載ってるから。売り切れてる所があれば買わなくて大丈夫」 「おっけー、じゃあ行ってくるよ!」 「行ってらっしゃい」 「頼んだぞー」  泰志を送り出した二人は眼の前の売り場に向き直った。 「よし、俺達も最後までやりきるぞ、千世!」 「うん! 頑張ろうね」  イベントがこんなにわくわくするものだとは知らなかった。好きなものにひたむきな人々の様子を見ると彼女たちがいかに本気なのかが伝わってくる。それにみんな楽しそうだ。  千世は体力の限り廉佳に尽くそうと心に決めたのだった。

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