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第164話
泰志の肩越しに通路を見ると、千世達へ向く視線がさっきより増していた。これはもしや、自分と泰志が『BL』として見られているのだろうか。それはいくらなんでも困る。
「た、泰志、まずいって。離れてよ」
「……どうしたの、千世にぃまで」
「このままじゃ僕たちが『びーえる』になっちゃうよ」
「うん? でもそれって間違ってなくない? 俺、千世にぃの愛人だし」
「あれ、確かに間違ってない……でもそういう話じゃないんだよっ」
泰志の胸の中でもがく千世を見て諦めたのか、ようやく腕を離してくれた。抱きついただけで千世たちが愛人同士だと思う人はいないだろうが、衆人環視の中であのような光景を晒すのは恥ずかしい。それに悪気も特別な思惑もない純粋な泰志がそのような眼で見られることに抵抗があった。
「泰志、用が済んだら帰ってもらえるとありがたい。部外者の男子が居たら買いにくいだろ」
「じゃあ俺も売り子やるよ」
「十八禁本売ってんのに高校生に売り子なんてさせられるかッ!?」
「え~」
どうしてもここに居たいらしい泰志は子供のようにむくれてしまった。その姿が何だかおかしくなって、ふっと笑い声を漏らしてしまう。
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