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第163話
「何だ泰志、もっと驚かないのか?」
「うん……驚きすぎて逆に冷静になっちゃった」
今朝にも聞いた台詞だ。人は驚愕 も度を超すと何故か落ち着いてしまうらしい。新しい事を知った、と前向きに捉えることにしよう。
「千世にぃ、その格好もすっごく可愛いね。もっと撮って良い?」
「あまり目立たないようにしろよ。周りに写真OKだと思われるからな」
「え、駄目なの?」
「勝手にSNSとかに上げられたら困るだろ」
「あー、そっか」
目立つなと言っても、どだい無理な話だ。このようなイベント会場に男子高校生が一人で立っているだけでも際立ってしまうというのに、泰志のような端麗な容姿の持ち主となれば尚更だ。
「ねえ千世にぃ、今度家でゆっくりコスプレして見せてよ」
「嫌だよ、絶対にしないからね」
「そんな~、この可愛い姿を今しか生で見られないなんて惜しすぎるよ」
泰志がでれでれとした顔で千世に抱きついてくる。彼が甘えた時の抱きつき方は昔から変わらなくて、全身で寄りかかってくるからいつもよろけてしまうのだ。
「ふ、二人とも。腐女子の餌食にされるからその辺にしとけ」
横から廉佳が小声で口を挟んでくる。『餌食』とは一体……?
「あれ、俺たちすごい見られてない?」
「だからその辺にしとけって言ってんだろ」
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