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第235話
ボケたつもりはないが、図らずもそういう結果になってしまって、決まりが悪くなった千世は笑ってその場を誤魔化した。すると泰志も面白くなってしまったようで。それにつられて千世も可笑しくなって、二人でくすくすと笑い合った。
「――二人とも、何してんだ?」
背後からあくび混じりの声が聞こえる。
「廉佳さん。ごめんね、起こしちゃった?」
「なに、こんな朝っぱらからいちゃついてんの? 俺も仲間に入れろよな」
「っ!」
さっきまで腕が乗っているだけだった千世の胸に、廉佳のそれが回り込んでくる。
両側から二人の体温に包まれて、千世はほっと肩の力を抜いた。そして眉尻を下げて笑うと、千世の気持ちが伝わったのか、廉佳と泰志はますます顔の距離を近付けてくる。
「ちーせ」
「千世にぃっ」
幼馴染みと恋人になって。弟とも恋人になって。世間体は良くないかもしれないけれど、もし誰かに邪魔をされたとしても別れることは決してない。これだけは確実に、自信を持って言える。
「廉佳さん、泰志……」
名前を呼び合うだけでも嬉しく感じてしまうなんて。恋は魔法みたいだ。
そんな、魔法にかけられたような気分だったから、普段は恥ずかしくて自分からは言えない言葉もすんなりと声になる。
これだけは、伝えたかった――
「大好きだよっ」
夜の終わりはすぐそこ。
日が昇れば、また新しい一日が始まるのだ。
二人の恋人との、かけがえのない、煌 めきに溢れる一日が。
――終――
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