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第16話 二度目のあやまち②

「そう、そうやって力を抜いて、俺に身を委ねて……」 「やあっ、あ、そんなところ舐めちゃやだぁ……霧咲さ……霧咲先生!」 「ヂュッ、ヂュルル……強情だなアキ、まだ俺を先生って呼ぶの?まぁ、いいけど」 「ひあ、ああっ、だめ、いや、だめぇ」 霧咲の長い舌で秘孔を舐められながら、自身や袋の方まで手でやわやわと揉みしだかれる。そんなことをされたら敏感な榛名はたまらず、一度出したのにまた達しそうになっていた。 しかし、さっき『大人のくせに』と言われたことが頭の片隅に残っており、なんとかイカないようにシーツを握りしめて耐えていた。 「ちょっと待っててね」 そう言って霧咲は持ち上げていた榛名の足を降ろすと、ゼリーを取りにベッドから離れた。 再び霧咲が戻ってきたとき、榛名の秘孔はまだ浅いところしか愛撫されていないのにも関わらずヒクヒクと疼いており、早くナカに挿れてほしいと霧咲に望んでいた。 「アキ……君のここ、いやらしすぎるよ。まさか俺と会わなかった間に彼氏を作ったりしてなかっただろうね?」 「はっ?そんなの作るわけない!ひあぁ!」 言いながら、霧咲はゼリーを榛名の孔に塗り、つぷりと指を1本突っ込んだ。それだけで榛名はまた達しそうになる。 あの日、自分を暴いた霧咲の指の太さ、長さを思い出してたまらない気持ちになった。 それを気付いているのか気付いていないのか、霧咲は指を根本まで突っ込み、前立腺を探るためにグニグニとナカを刺激してきた。 「あっ!あっ!」 「うーん、本当に?こんないやらしい身体を一人で持て余して、我慢できていたの?」 「だって俺、ゲイじゃないし!あんっ……あんなことしたのは、あの時が最初で最後でっ!あっあああ!ソコ、だめぇ!!」 「此処だね、わかった」 「ひああッ!そこ、強くおさないでぇ……!」 集中的に前立腺ばかりを刺激されて、榛名は自分でも知らない間に達してしまった。顔に自分の出したものが飛んできたので、達したことに気付いたのだ。涙や涎もだらしなく垂れ流していたが、前立腺のあまりの気持ちよさに酔って、それをぬぐう気にもなれなかった。 「アキ……君は、ゲイだよ」 突然、耳元で霧咲にそんなことを囁かれた。榛名は目線を霧咲に向けることで、その言葉に反応する。霧咲は続けた。 「君はいままで本気で女性を愛したことが一度も無いだろう。この間話を聞いていて、それは分かったよ」 「ちが……おれは、ゲイなんかじゃ、」 「そう思い込みたければ思ってればいい。けど身体は正直だからな。君は素質があるどころじゃないよ」 「ッひあぁ!」 グチュリと卑猥な水音を立てて一気に指を引き抜かれ、さみしくなった榛名のソコに指よりも質量のある熱いものが宛がわれた。考えるまでもなく、それは昂った霧咲のモノだった。 霧咲は膝立ちになり、仰向けの榛名の両足を持ちあげて丸見えになった秘孔に自身の先をゴリゴリと擦り付けている。榛名のソコはひくひくと収縮を繰り返し、自ら霧咲を胎内に取り込もうとしているようだった。霧咲はそんな榛名のいやらしい性器を見て、ゴクリと生唾を飲み込む。 「君は、自ら俺を求めているんだよ」 「そんなの、ありえない……っ」 「わかりやすい嘘だね。挿れてほしいんだろう?この間みたいに奥をめちゃくちゃに突かれて、ブッ飛びそうなくらい気持ちいいことされたいんだろう?アキ、正直に言いなさい。そしたら挿れてあげるよ」 「いや……!」 榛名は混乱していた。身体はこんなにも霧咲を欲しがっているのに、心がついていかない。自分はゲイなんかじゃないのに、と。 初恋を諦めたあの日から、そんなのは普通じゃないと思って女の子を好きになる努力をしてきた。結局、その努力はいくら続けても本物の愛に代わることはなかったのだが。 それでも、自分は男が好きなんじゃないと言い聞かせてきた28年間を、簡単に否定できるわけがない、けれど。 いま目の前で榛名に与えられようとしている快楽は、そんな榛名の28年間を簡単に否定してしまえるくらい、魅力的だった。快楽に弱すぎる自分が憎らしい。 でも、快楽を与えてくれるのが誰でもいいわけじゃない。 霧咲だから………。 あの日出逢ったのが、霧咲だったから。 (……運命の人なんかじゃないのに……) 「お、ねがい……」 「何?何をお願いしてるの?ちゃんと言ってごらん」 グリッ 「あぁッ!」 霧咲は、カリの部分だけを榛名のナカにぐっと押し込んだ。榛名の両足が空を蹴るように跳ね上がる。 「あ……あぅ……っ」 たったそれだけで、榛名の理性は崩壊した。 もう、霧咲に与えられる快楽のことしか頭には無かった。 「さぁ、アキ。ちゃんと自分の口でお願いしてごらん。俺にどうしてほしいのか」 「い、挿れてぇ……霧咲さんの硬いの、ぜんぶ俺のナカに挿れてっ……」 自分が言えと言ったのだが、先ほどまであんなに嫌がっていた癖に少し挿れただけで急にいやらしいことを口にした榛名に霧咲は意地悪い笑みを浮かべた。快楽に弱すぎる榛名が少し心配にもなったのだが……けど今は、そんなことはどうでもいい。 「挿れるだけでいいの?」 「いや、突いてっ!俺のナカのきもちいいとこ、いっぱい突いてほしいっ!」 「……よく言えました」 ズブブブ……! 「ひあぁっ!あっ、あーっ!」 霧咲自身が榛名のナカに突き進んでくる。途中で止まらずに、一気に根本まで。榛名は無意識に霧咲をきゅうきゅうと締め付けていた。一か月ぶりに与えられるその快楽を、榛名は眩暈がしそうなほどに感じていた。 「アキ、君のナカはすごくきつくて気持ちいいよ……っ!」 「はぁっ!あ、あうぅ……おれ、も……きもちいい……!」 自身を全て挿入したあと、霧咲は一旦榛名の脚を下ろしてそのまま上から覆い被さるように抱きしめた。 「アキ、」 「あんっ、あ、なにっ?」 (はやく、うごいてよぉ……) そう言いかけたが、それは霧咲の言葉によって遮られた。 「アキ……俺のものになって?いや、きみはもう俺のものだよね?」 「えっ?」 「きみは俺の、運命の相手なんだ」 (……おれが、きりさきさんの……?) 「好きだよ」 耳元で甘くそう囁いたあと、霧咲は再び榛名の腰を抱いて、激しい律動を開始した。 「あーっ!!あっ!あっ!」 ――気持ちいい。気持ちいい。 ズチュッ!ズチュッ、ヌプッ! 「ひあっ!ァッ!あんっ!」 霧咲に触られているところ、霧咲が挿入っているところ、すべてが気持ちいい。 「君が好きなとこは、ココだったっけな?」 「ひっ!いや、そこはだめ、あ、アァッ!」 (酒のせいなんかじゃない) 「ダメじゃなくてイイんだろ?アキ、正直に言ってごらん!そしたらもっと、気持ちよくなれるよ!」 「ひぁっ、あっ、イイッ!ソコイイのぉッ!霧咲さぁん!あ、あ、もっとして……!」 (霧咲さんのせいだ) 「可愛くおねだりできたね、アキ!君の欲しいもの、もっとあげるよ!」 「ァッ、アッ、もっと、もっとぉ……ひぁ、あぁーっ!」 霧咲は腰を大きくグラインドさせ、四つん這いにさせた榛名のナカを何度も何度も強く突き上げる。状況は全く違うけれど、まるであの日と同じように榛名は霧咲に翻弄され、声が枯れそうな程に喘がされている。 きっと、一ヶ月前も同じだった。霧咲のせいで、榛名はおかしくなるのだ。 「アキ、好きだよ、君も俺のこと好きだね?」 「あうっ、うっ、好きじゃない!」 「アキ、正直に言うんだ!ほらっ」 「ひああぁっ!や、やぁっ!すきなんかじゃ、好きなんかじゃないぃ……っ!!」 けど、あの日と違ってそこだけは流されるわけにはいかない。身体の方は、言い訳できないくらい流されていても。 だって、霧咲はもうただの見知らぬ一夜の相手ではない。 『霧咲誠人』という、K大学病院の腎臓外科医だ。素性も分かっている上に、今後は週に一度は顔を合わすことになる相手なのだから。 簡単に応えるわけには、いかない。榛名は彼の恋人になる気はないのだ。 「強情だね……ま、今はいいか」 「あっあっあっ、アッ、イクッ!!いっちゃう!きりさきさ、ああぁぁ……!!」 「ん、俺もイクよ!アキ……受け止めてくれ!」 榛名と霧咲は男同士。 トラウマになった、偏見の目。 『はるなくんって男子が好きなの!?』 『げーっきもい!』 (男を好きになるなんて、普通じゃない) 『早く結婚して孫の顔見せんね!あんたは榛名家の長男やっちゃかいね!』 (俺は男なんて、好きにならない) 「アキ……好きだよ」 「ンッ、チュ……」 (キスに応えることは、できるのに) 榛名は、しがらみを全部自分の中に押し込んで霧咲に正面から向き合うのが恐かった。付き合ったところで子供もできないし、親、きょうだい、学生時代の友達、職場の同僚――誰にも言えず、誰にも祝福してもらえない関係。 きっと『好き』という感情だけで耐えられるようなものじゃない、と思う。 (でも、今は……今だけだから……) 何も考えずに、この温かくて優しい身体に包まれていたい。 霧咲の首に腕を巻き付けて熱い舌を絡め合い、お互いの唾液を飲み込みながら、榛名はぼんやりとそう思った。

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