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第54話 君の嫌がる顔が見たくて
榛名は恥ずかしくて霧咲の顔が見れない。理由を話したのだからさっさと解放してくれればいいのに、霧咲は抱きしめる手を緩めてはくれない。
「オシッコ?さっき居酒屋でしとけばよかったのに。せっかくトイレだったんだから」
「だ、だって霧咲さんがいたから……!」
「俺がいたらできないの?」
「当たり前でしょう!!」
「ふうん」
今、少し間があった。
まさか、と榛名は思う。
(まさか……)
「じゃあトイレまで送ってあげよう。おいで」
「………」
(送ってあげるって、すぐそこなのに)
トイレは玄関からリビングに行く途中の廊下、つまり榛名たちのいる位置からすぐそこにある。霧咲の腕が緩んだので、榛名は霧咲を警戒しながらも立ち上がり、トイレへ向かった。
けれど榛名の予感は当たり、『当然』といったすまし顔で霧咲も後ろから付いてきた。
ヘタに突っ込んでも言い返されるに決まっている。しかしさすがにこの状況は突っ込まないといけないだろう。
「……あの、なんで一緒に入ってきてるんですか?」
「ああ、ごめんね。今ドア閉めるね」
ドアが閉められたが、霧咲はまだ一緒にいる。
「……いや、出てってくださいよ!!」
「なんで?」
「なんでって、当然でしょう!?俺がオシッコしてるとこ見たいんですか!?」
言ったあとに、ハッとした。……墓穴を掘ってしまった。案の定霧咲はニヤリと笑い、「手伝ってあげるよ」と楽しそうに言った。
「やめてください!ちょっと!」
「あんまり暴れないで、漏らしたらもっと恥ずかしいよ?」
霧咲は榛名が恥ずかしがると分かってやっている。後ろから榛名の腕ごと抱き込めるようにして、器用にベルトを外すとズボンと下着を一気にずり下げた。いきなり冷たい空気に曝されたせいで、局部は一瞬ブルッと震えた。
「っ……!」
そして霧咲は榛名のモノを掴み、便器に向けて排尿を促す。
「ほら、出してごらん?」
「……っむりぃ……!」
「何で?ずっとオシッコしたかったんだろう?我慢は身体に悪いよ」
「いやだ!霧咲さん、お願いだから出てって……!」
すがるような気持ちで訴えた。霧咲には全部見せているし、恥ずかしいことは何度もされているけど、今ほど恥ずかしいと思ったことはない。しかし、迫りくる尿意も抑えきれない。
「……ほら、君がオシッコしてるとこ、見せて?」
「ぅあっ」
耳元で囁かれて、下腹部をグッと押された榛名の我慢はとうとう限界に達した。
「あ……あっ……いやぁ……!」
始めの勢いは弱く、しかし一度排尿し始めたらその快感には抗えず、榛名は固く目を閉じて抗うのを止めた。勢いよく尿が流れ出る音がして、アンモニア臭が立ち込める。
まさかこんなことまで霧咲に見られてしまうなんて、羞恥心で気が狂いそうだった。
「はぁっ……はぁっ……」
「沢山出たね。気持ちよかった?」
霧咲は優しい声でそう言って、榛名の頬にキスをした。すると少ししょっぱい味がして、また泣き虫の恋人が涙を流していることに気が付いた。
「いやだって言ったのに……ひどい!」
ぼろぼろと涙を流しながら、榛名は霧咲に抗議した。しかしそれがこの年上のイジワルな恋人には何の効果もないことは分かっている。霧咲は榛名の代わりにトイレを流して、零れる涙を舌で優しく舐めとりながら、とんでもないことを言った。
「だって堂島ばっかりずるいじゃないか。あいつは君が吐いているところを見たんだろう?」
「!?……ど、堂島君が来たのは吐き終わってからですよ!?その、吐いたものは見られましたけど……!」
「なんだ、そうなの?」
(ま、まさか、そんな理由で……!?)
榛名はショックというか、呆れ果てて次の言葉が出てこなかった。榛名が黙っているので、霧咲は調子に乗った様子で爽やかに言った。
「じゃあ次は吐いてるとこ、見せてくれる?勿論今日じゃなくても構わないよ」
表情と台詞が噛み合っていない。爽やかにそう言いのけた霧咲に、榛名が返した言葉は――
「……変態医者……!」
自分がよく霧咲に言われている形容詞だった。というか、自分よりも霧咲の方がよっぽど変態だと榛名は思った。
そしてどんなに嫉妬しようとも、二度と吐くまで酒は煽らないぞ、と心に誓った。
「……そうは言うけどね、暁哉。俺はやっぱり君の方が変態だって思うんだよ」
「え?んぁっ……!」
急に下半身に甘い痺れが走った。用は足し終ったのに、まだソレは霧咲に握られたままでいたのだ。
「ほら……俺にオシッコしてるところを見られて勃ててるなんて、君の方が変態だろう?」
霧咲の言うとおり、榛名は勃起していた。霧咲はそのまま両手で榛名のモノをゆるゆると上下に刺激し始めた。次第に先走り液が溢れ始めて、グチュグチュという水音が狭いトイレの中で鳴り響いている。
「あ……っあ、こんなの、貴方が触るからだ……!」
「俺は軽く握ってただけだよ?そしたら君が勝手にこんなに大きくしたんだ……そんなに俺に握られてるのが嬉しかったの?」
「あっ!やぁあっ、だめぇ」
あまりにも恥ずかしくて、榛名は身体を捩って嫌がってみせる。しかしその行動は何の意味もなさず、ただ猫が甘えるように霧咲に身体を擦り付けただけだった。そして霧咲は、榛名の耳元でそっと囁いた。
「ふふ、まあいいんじゃないの?素直な君は最高に可愛いから。……ほら、もっといやらしい顔してみせて?」
「あっ……あっ……!」
「可愛いよ、暁哉」
目の前で無理矢理排尿させられて、その上しごかれている――、恥ずかしくて頭がどうにかなりそうなのに、『可愛い』という単語一つで何もかも霧咲に許してさらけ出してしまう自分は、本当に馬鹿だと榛名は思った。
けど、それで霧咲が喜んでくれるならいい。多分、もっと恥ずかしいことでもできる。
もっともっと、霧咲に愛されたい……好きすぎて、もうおかしくなっていると思った。
「君が可愛いすぎるから、俺もこのまま君のナカに入りたくなってきたな。ねえ……俺の指、舐めてくれる?」
榛名のモノを弄っていた右手を離して、今度は口許へ持っていく。自分の雄の匂いがしたけれど、榛名は霧咲が望む通りに指を口内へ迎え入れて、唾液をまとわりつかせるようにいやらしく舐めた。
「はぁっ、あふっ、チュ、あむぅ……」
「本当に、君はなんていやらしいんだろう」
そんな榛名を、霧咲はうっとりした顔で見つめている。そして固くなった自身を榛名の尻に擦り付けた。それに合わせて、榛名の下半身もゆるゆると動き出す。
(霧咲さんが欲しい、欲しい、欲しい!)
「……はやく、挿れてっ」
榛名の頭の中はもう、期待しかなかった。
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