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第84話 大人の時間

「あの、今更ですけど霧咲さん、本当に疲れてるんじゃ……あっ」 借りている少し大きめのパジャマの内側に手を入れられながら、榛名は霧咲の体調を確認しようとしたのだが、霧咲の手が乳首を掠めながら何度も肌を撫でてくるので、どうしても遮られてしまう。 「そりゃ疲れてるけどね……でも、今君が欲しいからいいんだ」 霧咲の言葉は、何度でも榛名の胸を熱くさせる。勿論、胸以外のところも。 「なんでそんな、無理してまで……」 「それって、君が頑張ってくれるってこと?」 「へ?」 「そういうことなら、お願いしようかな」 「何、っ!?」 いきなり身体を起こされたと思ったら、あれよあれよとソファーに座っている霧咲の膝の上に、向かい合って座らされていた。 「……この体勢の方が、もし見つかった時にも言い訳しやすいかもね」 「み、見つかる前提とか笑えないんですけど」 「勿論冗談だ。でも、君があんまり大きな声を出したら本当に起きてくるかもね。あの子は眠りが浅いほうだから」 「ちょっ、それ本気でマズ……ンッ……チュ……」 文句を言おうとしたのだが、また遮られた。今度は、唇で。 (見つかったらお互いにトラウマものだし……!) そう思っていても、榛名ももう止まる気はなかった。勘違いをしたあの日から、ずっと霧咲に抱いて欲しくて仕方がなかったのだ。滅茶苦茶に抱いてもらえば、切なくて苦しい気持ちが少しは楽になるだろうと思っていた。  誤解が解けたあともずっと手を繋いでいたからか、常に霧咲の体温を感じていて欲しくてたまらなかった。外でもトイレでもどこでもいいから、早く繋がりたかった。 (俺、はしたないな……恥ずかしい) ずっとそんなことを思っていたなんて、霧咲には絶対に言えない。しかし目の前の意地悪な男は、とっくに気付いているのかも知れない。 (となると、意地悪じゃなくてむしろ優しいのかな……?) そんな風に考えるのも、霧咲の思惑なのかとつい疑ってしまう。 「ほら、余計なことは考えないで。ずっと俺が欲しかったんだろう?」 「ん、ください……」 榛名は、既にガチガチに固くなっている霧咲のものをゆっくりとした手付きで取り出して、片手で擦り始めた。 「も、おっきくなってる……」 上下に擦りながら、とろけたような目をして榛名は言う。膨張しきったソレは、榛名の手に触られてビクビクッと愛しい反応を示す。にちゅり、と水音がしだしたところで先端を親指で集中的に可愛がった。 「んッ……我慢できないって、言っただろ?」 霧咲はさっきとはすっかり態度が一変した榛名に少し苦笑しながら、榛名の顔の至るところにキスを落とす。榛名は目を閉じてキスを受け入れながら、両手で霧咲のモノを可愛がった。 「ああ……嬉しい、です」 「ほら、君のも触ってあげる」 「んぁ……っ」 榛名のズボンと下着を引っ張ると、こちらもすっかり元気になった榛名のモノがピンッと弾けたように顔を出した。もしものことを考えて全部は脱がさず、霧咲は手を突っ込んで榛名自身を自分がされているのと同じように上下に擦った。その先端からは既に先走りが溢れていて、周囲をしとどに濡らしている。 「気持ちいい?」 「っきもちい……」 「俺も君の手、気持ちいいよ。少し冷たくて」 「霧咲さん、キスして……」 榛名は小さく口を開けて、舌を伸ばしてキスをねだる。その顔はとんでもない色香を放っていて、抗うことなどとてもできないと霧咲は思った。 「ん……っ」 「ふっ、チュプ、チュク……ッ」 いつになく積極的な榛名に霧咲は何度も理性がふっ飛びそうになったが、必死で自分を押さえていた。 亜衣乃がよく夜中に目を覚ましてトイレに起きるということは榛名には言ってないが、本当に見つかりそうになった時のためにすぐ対処できるように、心構えだけはしておかないといけない。ドアが開く音と、小さな足音が聞こえたらすぐに榛名から離れられるように。 しかしそんなことは知らない榛名は、霧咲の理性を奪うような激しいキスを次から次へと仕掛けてくる。 「チュッ、チュ……レロレロ……ジュプッ」 激しく舌を絡めて、口内を舐め尽くし霧咲の唾液を全て飲み込もうとする。下からも上からも、ぐちゅぐちゅと卑猥な音がし始めた。 「んちゅ……はッ……ヂュウウ、はぁッん……」  下半身が疼いてしょうがなくて、榛名はもどかしそうに腰をゆるゆると動かし始めた。霧咲はそんな榛名に気付くと、霧咲のモノを擦っている榛名の手を外して、自分の首にかけた。霧咲の意図を理解した榛名は、身体を預けるようにして軽く腰を上げた。 「指、挿れるよ」 「ん、はやくして……」 「せっかちだね」  霧咲は榛名のペニスから出ている先走りをたっぷりと手に取ると、後孔の周囲に塗りたくり、指をツプンと挿入した。 「んんっ」 「ん……痛い?」 「だいじょぶだから……早くして」  早く霧咲自身を受け入れたくて、榛名は霧咲を急かす。本当にせっかちだな、と霧咲は苦笑して、少し強張った榛名の力が抜けるようにもう一度キスをした。前を触る手も止めない。  唇と、前と、後ろ。3点を同時に攻められている榛名は、喘ぎながら体をくねらせることしかできない。思わず洩れそうになる声は、全て霧咲の口内へ吸い込まれていった。 「ぅん……ッんん……チュプッ、クチュ……ッ」  霧咲の首を何度も掻き抱きながら、榛名は必死で気持ちよさに耐えている。勿論、榛名も理性のすべてをふっ飛ばしているわけではないが、今回は前後の状況が悪すぎた。酒も入っていないし、いつもならイチャイチャの延長セックスを我慢することもできた。それなのに……今は一番したらマズイ状況なのに……。 (早く早く、霧咲さんが欲しい……)  たった数日なのに。これまでも、もっと長く霧咲に会えない日はあった。  なのに今日は、我慢できない。  きっと霧咲もそう思ったから、大阪で榛名に『今日はできないよ』とわざわざ牽制したのだろう。いつもならそんなことは言わないのに。でも、結局こうしてコトに至っている。我慢できないのは本当に霧咲も一緒なようで、榛名にはそれが嬉しかった。  いつの間にか霧咲の指を三本受け入れていて、榛名の後ろはギチギチに締め付けていた。 「暁哉、少し力を抜いて……指、抜けないよ」 「あ、むりっ……」 「このまま突っ込まれたいの?俺はいいけど、この体勢じゃ少しキツイな……」 「んんっ……!ふぅ……は……っ」  榛名はゆっくりと深呼吸をして、ソコをコントロールしようと努力した。指を三本も挿入された状態で更に霧咲の剛直を突っ込まれるなんて、冗談じゃないし何よりアブノーマルすぎる。強くいきんだ瞬間にズリュッと霧咲の指が引き抜かれてると、ナカが空っぽになって一気に切なくなった。 「あ、やだぁ……」 「ほら、君が自分で乗って挿れるんだよ」 「え?」  霧咲は榛名の尻だけが出るようにズボンをずらした。パジャマの丈が少し長いので、ギリギリ隠れてはいる。 「ほら、乗ってごらん。好きなだけ、奥にあげるから」 「あ……ッ」  榛名は霧咲の首にしがみつき、膝を立てて後孔に霧咲の先端を擦りつけた。その固くて熱い質量の感触に、ゴクリと無意識に唾液を飲み込む。  そして、短い深呼吸をしながらゆっくりと腰を落としていった。

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