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第137話 二宮、飴と鞭を使い分ける
「……っ、二宮、先輩……?」
もしかして、一か八かの甘えが功を奏したのだろうか。二宮は堂島の言葉に考え込んでいる様子だった。
「……でもお前、痛い方が気持ちイイんだろ?」
「それは盛大なる誤解ッス!!」
大真面目な顔でそんなことを言いだした二宮に、堂島は必死で否定した。本気でそんなことを思っているのか。確かに尻を叩かれて勃起してしまったのは事実だけど。
でも、決して気持ちよかったからなんかじゃ……
(………)
ない……と思うのだけれど。
仮にそうだったとしても、それは堂島的に絶対に認めたくない事実だ。尻を叩かれて悦ぶドМだなんて、いつか堂島が想像した榛名だ。榛名なら可愛いと思うのに、自分なんて。
「まあいいや。じゃあ優しくしてやっからとっととケツ向けろ。さっさと挿れて欲しいんだろ?俺もそろそろ限界なんだよ」
そう言って二宮は、自分で堂島を無理矢理ベッドの上に転がしてうつぶせにさせた。
「ちょっ、ほんとに優しくしてくださいよ!?」
「分かってるって。それ以上キャンキャン喚くならガムテープで口塞ぐぞ」
「ひいぃ」
しかも、貼ったあと思いっきり剥がすのだろう。そこまで想像して、堂島は変な声を出した。
「まぁ、そうすっとお前の女みてぇなヨガリ声聞けねぇからな……」
「あっ」
入り口に、硬くて熱い物体の先が宛がわれたのが分かった。
「はっ……あ、ああああぁぁっ…!!」
次の瞬間、とんでもない質量のものが一気にメリメリと堂島のナカに押し入ってきた。
「うわやっべ、ナカ超きっちー……おい、少し緩めろ。チンコが痛ぇ」
「ぁあっ……そっそんなん、俺の方が痛ぇよお……先輩のデカチン!!」
「あんだとコラ、褒めてんのか」
「結果的にそうなってるけど、今はそんな意味じゃないッス……!」
何こんな時にボケてんだよ!!と、堂島は後ろから涙目で二宮を睨みつけた。その視線を受けて、二宮がニヤッと堂島に笑いかけた。
「いいなその顔。すげーソソる……。それに随分と余裕そうじゃねぇか、最後まで挿れるぞ」
「え!?」
まさか、最後まで入っていなかったなんて。
「んあぁ!!あああ―――っ!!」
堂島は二宮にどんだけ長いチンポなんだよと突っ込みたかったが、そんな余裕はもはや消え去っていた。別に、さっきも余裕なんかなかったのだが。
「あ……あ、あ……っ!」
「どうだ、ぶっといの突っ込まれて気持ち良くて言葉も出ねぇかよ」
「ひぅっ!う、動かないでくださっ……痛い……!」
指で慣らされていたとはいえ、やはり痛いものは痛い。無理矢理挿入されて、堂島は自分の尻が壊れてしまったんじゃないかと思った。痛くて苦しくて、涙がぼろぼろと零れる。
(期待なんかして損した……やっぱ男同士のセックスなんて無理があるんじゃねーか!!)
そう、後悔せざるを得なかった。あの動画の男優たちは、きっと全て演技なのだ。男性向けAVに出演している女優だってほとんどは演技だということは分かっているはずなのに、どうしてあの動画は本当に気持ち良くてヨガっているんだと思ったんだろう。
榛名も霧咲に毎日(?)こんなことをされているのか。
なのに、あんな平気な顔で職場に来て――
(榛名くんて、まじすげぇ……神なんじゃねぇの?)
変な方向に、榛名を尊敬せざるを得ないのだった。
「堂島……おい、」
「はぁ、は……なんっすか……あッ!ンンッ!?」
いきなり呼ばれて、頭頂部の髪をむんずと掴まれた。文句を言う暇もなく無理矢理後ろを向かされて、そのままの姿勢で唇を押し付けられた。
また、キスをされている。
「はっ……ぁ、んちゅ、チュプッ、チュク……」
最初にされた時のような、強引で激しいキスだった。尻には突っ込まれていて髪の毛は掴まれていて、その上首を仰け反らされていてどこもかしこも痛いのに、キスは不思議と甘い。
(にのみや、せんぱい……)
まるで、飴と鞭のようだ。二宮が狙ってそうしているのかは分からないが、堂島は見事に引っかかっている。それほどに、甘くて優しいキスだった。
普段の二宮がしてくれそうな……
(普段の先輩とキスってなんだよ……今は、酔ってるだけ、だから……)
それでも、雰囲気に流されて堂島も二宮を求めてしまった。
「はっ、堂島……」
二宮は堂島の髪を離すと、そのまま後ろからギュッと堂島の身体を抱きしめた。そのままゴロンとベッドに横になる。
改めて、二人は濃厚なキスを交わした。舌と舌を絡め合わせ、唾液を交換し合う。
「はっ……ぁ……」
まるで本物の恋人同士のように。
「あッ……!」
キスに没頭してほんの少しだけ忘れていられたが、まだ自分のナカにはずっぷりと二宮自身が埋まったままだった。
そして、二宮は再びゆるゆると動き始めた。一応、堂島を気遣っているような速度だ。
「っだから、ちょっとは緩めろっての」
「あッ、あ、あぁっ!」
再び襲いかかってくる痛みを予想し、誤魔化そうとして、堂島は腕を伸ばして必死に二宮にしがみついた。しかし、あることに気付く。
(あれ?なんで……?)
先程よりも、痛くない。圧迫感は変わりないのだが、先ほどの甘く優しいキスのせいか痛みはだいぶ和らいでいた。それどころか、快感のようなものが混ざってきていて。
(な……慣れたのか?)
二宮は堂島の変化など気にも止めず、気付かず、ゆるやかに抽出を繰り返してくる。
「ふぁ!あっ、あっあっ……!」
痛いはずなのに、喉からは甘い声がひっきりなしに出てくる。
「はっ……やれば、できんじゃねぇか」
「あっ、あ、せんぱ……んあぁっ」
(なんで俺、気持ちよくなっちゃってんの……?)
堂島の変化に気付いたのか、二宮の腰の動きはだんだんと速くなっていく。ギリギリまで引き抜き、思い切りナカに打ちつける動作を繰り返す。
厭らしい粘膜の音と、二人の身体がぶつかりあう音が部屋中に響きだす。
「あん!あッ!あッ!あぁッ!!」
「はっ……!やべ、すげぇいいっ……!!」
一度気持ちいいと感じてしまえば、後はもう何も考えずに動くだけだった。堂島は手足を使い全身で二宮に抱きついて、高い声で喘いだ。
(こんなの……知りたくなかった)
喘ぎながら、堂島はそう思った。
(最初はすげー痛かったけど、男同士のセックスがこんなにも倒錯的で、気持ちいいなんて……)
最初から興味はあったものの、本当に知りたくない事実だった。
だって、
(また……二宮先輩に抱かれたいって、思っちまうじゃねぇかよぉ……)
「堂島、ナカに出すぞっ……!」
「あぁっ!俺も、イキます……ッ!」
「っく!!」
「あ……っあぁぁ――ッ……!!」
そんなことを堂島が思っていると知ってか知らずか、二宮は最後に激しく腰を打ち付け、堂島のナカに思い切り射精した。まるで、堂島のナカに自分を刻み付けるように。
出されると同時に、堂島も絶頂に達していた。こんな快感はもう忘れることなどできない、また二宮に抱かれたい……という気持ちのままで。
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