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第178話 お互い、気持ちの大きさを知る
二宮は少し神妙な顔で堂島をじっと見つめて言った。
「……お前、俺のこと好きだったのか」
「え、いや、まあ……はい」
あれをきっかけに好きになったなんて言ったら、また色々誤解されそうな気がする。
だから堂島は黙って二宮から目を逸らした。勝手にどんな解釈でもしてくれ、と思って。
「いつからだ?」
「い、いつからって……」
(いつからでもねーよっ!って、言わないけど……)
「俺、お前はずっと榛名さんが好きなんだと思ってた。普段から色々ちょっかい出してたし」
「はぁ?んなことねぇし……なんでみんな同じこと言うかな……つーか榛名くんのこと好きだったのは二宮先輩の方でしょ」
あの夜、二宮は榛名の肩をもつような発言を沢山していた。堂島が榛名を襲いかけたことをカミングアウトしたらブチ切れたり、他にも色々……
「え、なんで俺が榛名さん好きなんだよ?」
「無自覚かよ」
「いや、確かに俺は榛名さんを気に入ってるけどな、それはあくまで人間としてだ。あとちょっと込み入った事情に偶然首を突っ込んだ…というか鉢合わせたことがあって、それでまあ、俺はいつもあの人の味方でいたいと思ってる。それだけだ」
「ふうん、味方ねぇ……」
(人間として好きとか無理矢理思い込みじゃん。じゃなきゃ好みのタイプに榛名さんを女にした感じ、とか言わねぇよ普通の男は……)
「お前だってそうだろ。榛名さん大好きなの、隠してもバレバレだからな」
「お、おお俺は別に榛名くんなんか!」
(好きじゃない!嫌いでもないけど!)
しかし二宮の言う通り、堂島が以前榛名にちょっかいを出していたことも、トイレで襲いかけたことも事実なので、いくら否定してもただのツンデレのようにしか見えないのだった。
「てか、さっきからマッパで何の話をしてるんだろうな、俺たちは……」
「先に止めたのは先輩ですよ。……はぁ、でもなんかいい具合に緊張とけました」
堂島はそう言うと、二宮の胸を押しのけてぐいっと起き上がった。そしてキョトンとしている二宮と一瞬だけ向き合い、素早く四つん這いになる。
「お、おい、堂島?一体何す……」
「なにって、フェラ」
軽くそう告げると、ショックですっかり萎えてしまっている二宮のモノを手に取り、ぬっと舌を這わせ始めた。
――チュッ、レロ、チュプ、ジュプ……
「は!?ちょっと待てって!んんっ……!」
さっきまで処女のように緊張して恥ずかしがっていた堂島は何処へやら。どうやら二宮が榛名の名前を出したことがなんとなく面白くないのだろうと、堂島は自己分析をした。
「チュブッ……二宮先輩、今まで彼女にフェラさせたこととか無いっしょ」
「ンっ……え?まあ……」
「先輩のチンポすっげえでかいすもんね……口に含むのも大変だし、目の前で見たら女の子は怖がっちまいそうですし」
舐めていない時は手で竿を上下に擦りながら、堂島は他人事のように言った。二宮はどんな反応をして良いのか分からず、黙って言葉を探している。
その手は堂島の少し傷んだ長めの茶色い髪をさっきから弄んではいるが。
「ペロッ、チュプ、フェラすんのは、俺が初めてですか?」
「っ、ああ……」
「ふふ、それちょっと嬉しいっス……」
ジュプププ……
「ンっ、アッ、あっ、どう…じま…っ」
「ングッ、チュブッ、はっ、……れへぇ……」
入るとこまで咥えこんで、舌と喉を使って必死に舐めた。入らないところは手で愛撫し続ける。先走りと唾液が口内で混ざり合って、飲みきれずに口端からシーツにボタボタと零れていく。
「も、離せっ!出るから!」
「ん、ほろままらひて」
「ダメだっ、離せ!俺はおまえを……ばか吸うな、うあ、ぁっ……!」
堂島は思い切り二宮のペニスの先端に吸い付き、その刺激で二宮はあっけなく堂島の口内に射精したのだった。
「ほら、ティッシュ!吐き出せ!」
「ん……」
さすがに飲み込みまではしなかったようで、堂島は大人しく二宮の差し出したティッシュに精液を吐き出した。
「ったくお前は、無茶すんな!」
「……気持ちよかったですか?」
堂島は、二宮の説教を遮って聞いた。
「すげー良かったよ。でも、本当に次からはしなくていいから。苦しそうな顔させんの嫌なんだよ」
(すげえ酔ってる時との差があるなぁ……)
本人が目の前にいるのだが、本当にあのドS野郎と同一人物なんだろうかと疑わざるを得ないくらい、二宮が優しい。
「別に俺も出させるまでするつもり無かったですけど、二宮先輩の気持ちよさそうな顔見たら全然、止まんなくて……」
「っ、」
二宮は、ぐいっと堂島を引き寄せた。そして、再びさっきのような激しいキスをしてきた。
「ンッ!んんっ……」
堂島はさっきフェラしたばかりなのに!という抗議の意味を込めて二宮の胸を数回叩いた。しかし二宮はそんな堂島を抑え込み、何度も獣のようなキスを繰り返す。
「せんっ……んむっ、チュブッ、はぁっ」
激しすぎて、堂島が舌を絡める隙はない。ただされるがままに、口内を二宮の好きなように蹂躙させていた。
(なんか、肉食動物に食べられてるみてぇ……)
フェラした後だからとか、そんな細かいことはどうでもよくなった。それにとても気持ちがいいので、このままずっと身を任せておきたくなる。
なんとなく酔った時の二宮らしいものも感じて、やはり同一人物なのだと少し思った。
「ん、ん……っ」
いつの間にか腕を二宮の首に巻き付け、顔を傾けてキスを受け入れてしまっている。堂島の抵抗が完全に無くなった頃、二宮はやっと唇を離した。
「はあっ、……せんぱい……?」
「お前、あんまり煽るな!これでも一応酒、入ってんだからな!」
「え、煽られたんですか?二宮先輩が、俺に?」
(何か煽るようなこと言ったっけ?俺)
「もうさっきからずっと煽られてんだよ!お前……無自覚か!?」
「へ?」
「ハジメテだから優しくしてやりてぇのに、めちゃくちゃに抱いてしまいそうだろ……!」
「っ」
切羽詰まった表情に、きゅんときた。
だから、
「べ……別に、二宮先輩がしたいように抱いてくれて構わないっす。激しくても……俺、男だから頑丈だし、好きにしちゃってください」
それは堂島の本心で、煽っているわけではない。
『男だから萎える』とか言われるよりも、よっぽど嬉しいから。
いや、だいぶ、めちゃくちゃ嬉しい。
自分で興奮してくれるんだな、と安心できる。
しかし二宮は、そんな堂島の言葉にはぁーっと大きなため息をついた。
「先輩?」
「お前は……俺を殺す気なのか?」
「!?」
一体二宮は何を言っているのだろう。
あまり理解はできないものの、しかし……
(なんか、二宮先輩が物凄く俺の事を好きみたいに見えるんだけど……)
実際そうなのだが、堂島には俄に信じられなかったのだった。
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