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20-2 スキル「安産」で異世界を渡り歩く方法

 最初、どうしてこんな不幸が俺にと思った。どこかも分からない森の中で、訳のわからない植物に襲われて。  でも直ぐにそれを忘れた。ユーリスがいて、親切に世界の事を教えてくれて、守ってくれて。  思えばこの時にはもう惚れていたんじゃないかな。初めてだったから分からなかっただけだ。  そうじゃなきゃ、いくら薬でビッチになってても男はご免だと思ったはずだ。それにあの時、俺はユーリスが助けてくれる事だけを考えていた。  だからこそ、ダメダメな俺の能力が悲しかった。唯一あったのが「安産」って、どうなのよって思った。  勿論、一番ユーリスが必要としてくれるのも分かってた。でも、言い出す事ができなかった。  怪我をさせて、俺のせいで、とにかく情けなくて苦しかった。何でもいいから有益でないと。そんな風に思って迫って、撃沈して逃げた。あの時の俺、ダメダメな。  でもおかげで、俺はこの世界で親のように思える人と出会った。過ごした一ヶ月は宝物だ。親の愛情なんて知らない俺が、こっちで知らない人と家族になれた。これはある意味で勇気を貰えた。  ユーリスと気持ちが繋がって、ためらいなくこの人の子を産みたいと思えて、それが叶った。色々焦ったし、正直しんどかった。  あの苦しみはもうしばらく避けたい。俺の願いを言ってみたら、ユーリスは目を丸くして「勿論だよ」と笑ってくれた。  俺の旦那、いい人だよな。一ヶ月を過ぎたら乳止まったし、そうしたら次の子供作れるようになるんだって。俺は子作りの機械じゃないっての。  そんな俺の気持ちも分かってくれるし、何より俺の苦しみようはユーリスも側で感じてくれていて、「あんなに辛いのなら、子供は一人でいい」なんて言い出したくらいだ。優しすぎる。  でも俺は、もう少しシーグルが育てばもう一人か二人いてもいいと思ってる。寂しい子供時代の俺って、子沢山とか憧れる。  屋敷では俺ばっかりじゃなくてメイドさんや婆さんもシーグルの面倒みてくれるから、俺もそこまで追われたりしてない。  なんにしても、俺は今幸せなんだろうな。

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