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三かいめ……えっ! まじで?!
――二度あることは三度ある、なんて信じないからな俺は……!
二日連続抜きっこをした後は、お互いバイトがあったりデートがあったりで、暫く汀は家に来なかった。それでも大学で会ったら普通に話すし一緒に飯は食うし、今まで通りの関係だ。正直、ほっとしている。気まずくなったりしたら微妙だし、汀とくだらない話をするのはやっぱり心地が良い。
今日はたまたま、午後の最後の講義が一緒だった。別の友達も交えて話をしながら大学を後にして、一人また一人と道を分かつと、残るのは俺たち二人になった。
「今日バイト?」
「いや」
「んじゃ一緒に飯食お」
「おー」
「汀ん家行って良い?」
ここで、俺ん家、なんていうとまたああいう流れになりそうで、敢えてそう頼んでみる。汀の部屋の方が、俺のところより高級だ。
「いいけど、何もねえぞ」
「いいって、買ってこ。んで作って」
「あいよ」
飯は汀任せだというのはもう覚悟しているようで、あっさり頷いてくれる。それに安心して、俺たちは並んで帰路に着いた。街はすっかり、夕陽の色に染まっている。そろそろ薄着が目立つ季節だ。すれ違う女の子に思わず目を奪われながらも、最寄りのスーパーを目指す。
汀の部屋は、学生のくせに1LDKだ。学生のくせに。お互いあんまり家族の話はしないから知らないけど、きっと実家が金持ちなんだろう。黒を基調にしたインテリアもオシャレで腹立つ。勝手知ったる何とやら、で俺は部屋に着くなりリビングに入って、黒いソファにぼすんと腰かけた。でかいソファが座り心地がよくて、気に入っている。
「はー、つかれた」
「お前なんもしてねえだろ」
「授業受けましたー」
「学生の本分だろうが」
そう言いながらも買い物から荷物持ちから全部してくれた汀は、大分俺に甘いと思う。汀は座る暇もなく、スーパーの袋から食材を出して、キッチンに立って料理を始めている。働き者だ。
「海里」
「はーい?」
「飲み物用意しとけ」
「はいはい」
これぐらいはね、手伝わせてもらいます。
素直に立ち上がって、汀の足元にあるスーパーの袋を手に取った。中には、主に俺が選んだ飲み物の缶がある。ビールとカクテル、チューハイ、所によりオレンジジュース。袋ごとリビングに持って行って、黒いローテーブルの上に並べた。美味そう。
「汀くん」
「ん」
「今日のご飯なーに?」
「パスタ」
「やりい」
料理関係は全て汀にお任せで、食材選びにも一切関与していなかったから、今日の献立を聞いてテンションが上がる。まあ、何でも喜ぶんだけどね、汀の料理は美味いから。前に一度、彼女の手料理を食べたときに、無意識に汀の料理の味と比べてしまってえらく怒られたことがある。それぐらい、俺の舌に染みついている味だ。
大型テレビを点けて、夕方のニュースが流れるのを観ながら大人しくしていると、「出来たぞ」の声が聞こえて立ち上がった。
「うっわ、うまそう!」
所謂、冷製パスタだ、これ。トマトソースが掛かって、涼しげで透明な器の中に盛り付けられている。すぐに二人分の皿を、リビングに運ぶ。
「当然だ」
俺のリアクションにも汀は当たり前のように頷き、手早く作ったサラダを持ってリビングに来た。グラスに缶ビールの中身を注いでやる。
「汀くんすげーかっこいー料理人みたい! はいどーぞ!」
「どーも」
汀の手料理の恩恵に預かるときは、とりあえず持ち上げておく俺である。汀も汀で満更でもなさそうに頷いて、俺が差し出すグラスを受け取る。俺も俺でビールの入ったグラスを手にし、汀のグラスとかつんと合わせた。
「かんぱーい」
「乾杯」
ぐびぐび、ごくん。
喉越しが美味い。大学生になってから飲むようになったビールは、最初は苦かったけど、一年経って慣れてきて、漸く美味いと感じるようになった。汀も良い呑みっぷりでグラスを傾けている。
グラスを置いて、フォークを手にする。「いただきます」と挨拶してからパスタを口に運ぶと、冷えた麺とあっさりとしたトマト味が舌の上で蕩けてくる。
「うまいー」
「だろう」
「うん」
当然のように言うのに、反論する余地はない。だって美味い。口に運ぶ手は止められなくて、勢いよく食べ進める俺を、汀は何も言わずに見守っている。
「よく食うな」
「だってうまい」
サラダも美味い。
ばくばくもしゃもしゃ食い進めると、あっという間に腹が満たされる。グラスの中が空になったから、缶のカクテルに手を出した。汀のグラスには、ビールを注いでやる。
「あー、しあわせ……」
アルコールのふわふわした感じや、美味い飯を腹いっぱい食った満足感に、俺は目を細めて呟く。汀は笑った。
「安い幸せだな」
「いやいや、いいことでしょー」
反論しながらも、俺は心地良さでいっぱいだった。
「……で、なんでこーなるの……」
そして、気付いたら汀を見上げる体勢でした。いやいやおかしいでしょ。おかしいよね!
お互い飯を食い終わってまったりして、俺はアルコールの所為であんまり動く気もしないまま片付けまで汀に任せていたのが少し前の出来事。ソファに寝転んでぐでる俺を見下ろした汀が、俺の上に覆い被さってきたのがたった今の出来事。
「今日はしないからねー」
「ああ?」
「しないからね!」
不満そうに言うのも聞かないふりだ。
近付いてくる汀の肩を力いっぱい押し返す。ぐぎぎ。汀の方が体格が良いからか、あまり動かないのが悔しい。俺だってそんなひょろくはないつもりだけどっ。
「飯作らせといてそれか」
「それとこれとは関係ないでしょー」
「毎日したいくらいなんだろ?」
――だったら俺にやらせとけ。
そんな風に囁かれて肩を揺らす。うう、童貞のくせにイケメンボイスはずるいです。顔を背けると、汀の指先が頬を撫でてくる。ひやりと冷たい手が、酒で火照った顔には気持ちが良い。
「すっかり汀の方がハマってんじゃん……んっ、」
「否定はしねえ」
「いやいや否定しろよ、……あ、」
その冷たくて心地良い手が、頬から首筋、Tシャツ越しに身体を撫でてきて、ぞわぞわする。こいつ、いつの間にこんなテクを……! 逃げようとして身を捩る俺の腰を抑えて、ジーンズのホックを外してきた。まじこれいつものパターンすぎて、ちょっと泣きたくなる。
「待ってってば、ぁ、」
「大人しくしとけ」
「やだやだ、やだ、あっ」
首を振って、汀の手を抑えるが、俺の手をスルーして、ジーンズを下ろしやがった。ボクサーパンツも下ろされて、未だに柔らかい俺の息子がこんにちは、だ。空気が触れてひやりとした。
「あああもうなになんなのっ」
「気持ちよくしてやるよ、ついでに俺も気持ちよくしろ」
「さらっと言うなよばか、あ」
剥き出しのペニスを握られてぞくりとする。上下に擦られれば、それだけで俺のものは、俺の意思とは別に硬くなってしまう……。うう、素直な息子が憎い。
「んっ、んー……っ」
「今日は随分素直じゃねえな」
「ん、ぅ……だって、」
「ああ?」
「癖になったら、こまる、……ふぁ、あっ」
正直なところを呟いた途端、俺のを扱く汀の手の動きが速くなって、内腿が震えた。いつもは邪魔するジーンズがなくて、つい、足を開いてしまう。その間に汀の身体が入り込んできて、俺のを見下ろしていた。やばい気がするぞ、これは……。
「ひぅ、んっ、ん、」
「ぬるぬる」
「しかたねー、だろ、……っあ、」
「もっとぬるぬるにしてやろうか」
「は?」
「ちょっと待ってろ」
そう言い置いて汀が立ち上がった。逃げるなら今だと思うが中途半端に弄られて力の入らない俺は、肩で息をして、汀の行方を目で追いかけることしかできない。少しすると、手に何か持って戻ってきた。
「それなに……」
「ローション」
「あ、そう…………はあっ?」
今何て言ったこいつ? 耳を疑う俺をよそに、ちゃっかりソファの上にタオルを敷いた汀は手にしたボトルを傾けて、掌に中身を垂らす。透明で粘り気のあるそれに、ものすごく、嫌な予感がした。
「なになになにする気、……ぅあっ、つめたいー」
ひやりとしたものが俺の性器に降りかかってきて、内腿が震える。身を捩るが、汀がそれを許さない。とろとろというより、ねばねばとした粘着性のある透明なローションに、俺のかわいい息子が汚されてしまった……。ううう、こんなの、彼女とも数える程しかしたことないのにい。
「まじさいてー……っん! ぁ、やぁだ、」
「すげ、ぐちゅぐちゅ」
「んっ、ぁ、ぅん、うー……っ」
ただでさえ先走りでぬるぬるしていたペニスが、とろとろのローションで包まれて、それを汀の掌全体で包まれて上下に擦られると、ぐじゅぐじゅと濡れた音が響く。突き抜ける快感も、一人でするのより全然よくて、あられもない声を上げることしかできない。自然と汀の手の動きに合わせて腰が揺れちゃうのは、男の子として仕方がないことなんじゃないでしょうか……。
「ぅあ、んっ、だめ、っあ、ふ、いく、いっちゃう、」
冷静になったら穴掘って隠れたいぐらいの、AV女優なみの喘ぎ声を上げて、俺は目の前の汀に抱き着いた。ペニスを扱かれる直接的な快感がよすぎて、頭ん中が真っ白になりそう。縋るようにぎゅっと抱き着いたら、あろうことか奴は、爆発寸前の俺のものから手を離しやがった。
「ふあっ、ぁ、……っは、なんで、」
「んー、ものは試しっていうだろ?」
「意味わかんね、……っうえ、え!?」
寸止めで焦らされて涙目で抗議の声を上げるが、当の汀は首を傾げてそう告げる。意味がわからない、ていうか会話が成り立ってない。汀くんどうしちゃったの。ちらりと見る親友の瞳はぎらついていて、男の欲を感じた。いや、感じたくないけど。
ふーふーと肩で息をしていた俺は、目を丸める。ぬるぬるにぬれた汀の指が、あろうことか俺の尻の穴を撫でてきたからだ。
「待って待ってまじやだ無理やだやだやだ」
「気持ちいいらしいぞ」
「何調べてんのやだ、あっ!」
ぬるって! ぬるって! 入ってきた!
ばたばた暴れる俺をものともせず、孔の表面を撫でていた汀の指が、ぬるりと中に入ってくる。幸か不幸か、ローションでぬるついていた指を、俺の身体は抵抗もなくすんなりと受け入れる。ちょっとは抵抗してほしい。
「やっ、待ってってば、」
「前弄るよりよくなるらしい、前立腺」
「だから何調べてんの童貞のくせに……! っう、うー、動くなってばあ」
真面目な顔で言うなっつうの。
俺だってちょっとは聞きかじったことがある。高校の頃、あらゆる意味で勇者な先輩がアナニーにハマったことを勢いで暴露していて、みんなで爆笑しながら興味本位で色々聞いたことを思い出した。女の子の気持ちがわかるねアレは、としみじみ言っていた本間先輩、元気かなあ。イケメンなのに群を抜いた変態でもったいなかった、なんて現実逃避をする俺をよそに、汀の指が、俺の中を探るように動いている。座薬以外の異物を初めて受け入れた内壁が、きゅうきゅうと動いているのをわかる。
「も、やだって、ひぅ、――っあん!」
びりっときた。
好き勝手に中を擦ったり掻き回したりしていた汀の指先が、くい、と曲がって、奥にある一点を擦った途端に、ぱちぱちと目の前に星が浮かぶくらいの快感が身体の奥底から駆け上がってくる。反射的に、自分でも聞いたことのない高い声が零れ出た。
「へえ、ここか」
「っや、ぁ! ぁん、あっ、だめ、やだ、っふぁ、あっ」
舌なめずりをしながら汀が囁いて、味を占めたように何度も何度も其処を引っ掻いてくる。その度ぞわぞわしてぞくぞくして、もうわけがわからない。放っておかれたペニスからは、とろとろと、ローションではない透明なカウパーが溢れてきて、内腿を伝った。
「うぅ、やっ、そこ、んっ、んんっ」
「やだ、じゃなくて、イイ、だろ?」
「やだぁ、……ひぁ、あっ、ぁふ、――っあ、ん!」
汀の意地の悪い声に俺は首を横に振る。内壁を擦りながら汀の指が抜かれて一息吐いたら、すぐにまた、今度は二本の指が入り込んでくる。もう俺の身体もとろとろで、ローションに濡らされた内壁は、あっさりとその二本の指を飲み込んでしまう。きゅ、と締め付けるのを無視して、二本の指で、孔が広げられる。少しひやりとした空気が入ってきて、ぞわりとした。
「ぁあっ、んっ、んん、っは、ふ……っや! ぁ、」
「すげえな……」
汀の荒い息混じりの呟きも、俺の耳にはもう届かない。気持ちよくて、良すぎて、何も考えられなくなった。きゅ、と意図して汀の指を締め付けると、指が中を擦り上げていく。時折、前立腺を掻いていくのが堪らない。もう口を閉じてもいられなくて、口角が唾液で濡れていた。
「っあん、ぅあ、っふ――んっ、ん、ぁ、また……!」
ずる、と二本の指が浅いところまで抜かれたところで、三本目の指が押し入ってくる。ぐちゅり、中が掻き混ぜられて、ローションが濡れた音を立てる。すっかり広がった俺の其処は、苦もなく受け入れてしまい、更にばらばらに三本の指が動きだすのに快感しか感じられなくて、溜まっていた涙が零れた。
「――っ、は、ふ、なぎさ、ァっ! も、やだあ、」
でも、尻だけじゃイけない。
気持ちよすぎるのがこんなに苦しいなんて、初めて知った。
ふるふると首を横に振り、元々自制心なんてちょっとしか持ち合わせていない俺は、勃ち上がった性器を自分で擦ろうと握り締めた。しかし、手首を汀に捕まれて、それすら許してもらえない。
「や、なんで……」
「俺のことも、よくしてくれよ」
そういう汀の声色は低く、僅かに息が上がっていた。ああ、知ってるこれ。挿入五秒前の顔だ。
――え、まじで。
なんて俺が思う間もなく、汀はゆっくりと俺の中から指を引き抜いた。ひくり、今まであったものがなくなった違和感に、俺の濡れた孔が収縮を繰り返している。
「ななななぎさくんおちついてきみのはじめてがおれでいいのかい」
「色気ねえな、大人しく喘いでろ」
「無理無理無理です無理ィうわもうゴム着けてる早!」
「息、吐いてろよ」
そう言うと汀が俺の脚を広げてきた。抵抗したいのに力が入らない、くそう。ひくつく孔に、ゴム越しに汀のものの先端が宛がわられるのがわかる。思った以上の熱さに、ごくりと息を呑んだ。観念したともいえる。
「やっ、やさしくしてね、――っひぁ、んっ!」
「っふ、……きっつ、」
恐々と、敢えて軽い口調でそうねだった直後、ぐ、と腰が押し付けられた。散々指で慣らされてローションでべちょべちょに濡れた俺の穴は、初めてだというのに、ぐちぐちと音を立てながら汀の逸物を飲み込んでいく……。も、もうちょっと、抵抗しろよ、俺の身体。自分でもちょっと思う。
「っふ、ぅあ、……ん、んんっ」
「すげえ、……全部、入った」
汀も容赦がない。最初こそ狭そうに眉を寄せていたけれど、ぐ、ぐ、と俺の濡れた内壁を掻き分けるようにして進んで来て、ゴム越しに脈打っているのがわかる。圧迫感に眉根を寄せ、俺は少しでも自分が楽になるように、足を開いた。それを合図に、奥まで、汀が押し込んでくる。俺の尻が汀の腰に当たるのに、言葉通り、全てを飲み込んだのを実感した。
「っふ、……ふふ」
「ああ?」
「ふは! まじ、全部入ってる! なにこれ繋がってる!」
堪えられなかった。汀が動きを止めているのを良いことに、俺は込み上げる笑いを堪え切れずに爆笑した。
いやだって親友とローションプレイの挙句にケツ穴掘られるとか、なんかもう、笑うしかないよねっていう……。
「笑うなばか色気がねえ」
「あってたまるかよばか……っあ、ん!」
呆れた汀が、業を煮やして、腰を揺すってきた。思わずぞくんとして、お望み通りの喘ぎ声が勝手に出てきた。あんだって、あん。うける。
「っは、……おまえさ、俺が初めてで、いーの」
漸く笑いの波が退いてきて、でもこれだけは確かめなきゃいけなくて、視線を持ち上げて汀を見上げた。汀の目は相変わらずぎらついた男の目で、興奮しちゃってるのがわかる。俺の中にある汀のものだって、萎えちゃいない。でも、こいつは童貞だ。幾らなんでも、初めては好きな女の子がいいんじゃないの……。
「うるせえ知るか」
「なにそれひどい! 俺だって後ろは初めて……っう、あ」
「責任、取ってやるよ」
責任取ってよね、と言い切る前に、腰を掴まれて揺すられてしまう。それでも日頃の付き合いからか、俺の言わんとすることを察して、汀が口角を持ち上げて言う。くっそ、今の録音しておきたいくらいだ。
「海里」
「っん、ぁふ……っ、」
「そろそろ黙って喘いどけ」
「なにそれ矛盾……ッ、ひ、ぁ!」
腰を揺さぶられたら、良いところを刺激されて、突っ込むことすらままならない。腰を掴まれて、ずる、と汀のものが引き抜かれると同時に内壁が擦られて、かと思えばまた奥まで押し入って来る。太いところでゴム越しに前立腺を擦られて、俺の身体は俺の意識とは別に、汀のものをきゅうきゅうと締め付けた。
「っあ、んっ、……っふぁ、う」
悔しいけど、汀の言う通り、喘ぐことしか出来ない。汀の背中に腕を回して、快感に飲み込まれないように、しがみつく。俺の中に残ったローションが、汀が動く度にぐちゅぐちゅと音を立てた。
「――っひ、ぅ、あっ!? やっ、ぁ、」
不意に、汀が完全に屹立した俺のものに触れてきた。びりりと直接的な快感が背中を駆け抜けてきて、とろとろと先端からはカウパーが垂れ落ちる。
「本当に初めてか、お前」
「はじ、めて、っあ、ん、っ、ん!」
だって、だって、こんなの、知らない。
全身が性感帯になったみたいに、どこもかしこもキモチイイ。
腰を動かすのとリズムを合わせて俺のものも扱いて来るから、俺の腰も、自然と腰が揺れてくる。
「っふぁ、あっ、なぎ、さ、なぎさ、」
「ん……」
「やぁ、あっ、いく、いっちゃ、う、や、ぁ、」
「もうちょい、……」
「ふえ、!? っあ、ぁ、やだ、やだぁ……!」
嫌な予感がした直後、やっぱり、以前もそうしたように散々弄り倒した俺の性器の根元をぎゅと掴みやがった。イきたくてもイけなくて、俺の内腿が震える。白濁混じりの先走りがとろとろ溢れているのにも、汀のやつは知らんぷりだ。
「っぁん、っあ、ぁふ、やぁ、やだ、ぁっ」
「――っは、……ふ、海里、」
「ぅん、あっ、ぁ、!」
もう意識が飛びそう。
がつがつと奥から揺さぶられ、イきたいのにイけなくて、俺の目尻から溜まった涙が溢れてきた。喘ぐ吐息の合間にえぐえぐと嗚咽混じりに情けなく泣くと、汀が、「っち」と舌打ちをしてきた。ひどい。
「海里、」
「ん……ッ!? ひ、あっ、ぁ……っ、あぁ、だめ、だ、め、ぁ、あ――ッ!」
俺の名前を囁いた途端、更に激しく汀が腰を動かして、前立腺を突いてきた。俺のものを扱き上げて、先端に爪を立てるのと同時に戒めが解かれて、俺の頭ん中が真っ白になる。もう何も考えられなくて、びくんと背中をしならせて、達した。きゅぅ、と中を締め付けたら、それとほぼ同時に、汀のものが脈打つのがわかる。――ゴム、着けてて、よかった。
「っはあ、は、ふ……」
「――大丈夫か」
「は、……しん、じ、らんねー」
くたりと全身の力が抜けてソファに身体を預けながら、荒くなった呼吸を整える俺を見下ろして、汀が尋ねてきた。色々信じられねー、まじで。
「っふは、まだ中にある。うける」
「笑ってんじゃねえよ、」
「じゃあ早く抜いて、……ん、」
俺の中に萎えた汀のモノがあるのが確かにわかって、また笑いが込み上げてきた。それに汀は、汗の浮かぶ額にかかる前髪を掻き上げながら、呆れたように言ってくる。腰に手が宛がわれ、ずるり、と、内壁を擦って、引き抜かれていった。今まで中にあったものがなくなって、変な感じがする。
「っは、ふ……」
「なんだ、物足りねえか」
「ち、がうってばー」
そんな人を淫乱ビッチみたいに! 初めてなんだからね!
反論する元気もなくて、俺はくたりとソファの上に寝そべった。身体中がべとべとする。
「べとべとー」
「ぐちゃぐちゃだな」
「誰の所為ー……あーもー、風呂入りたいけど入る元気ない」
「連れてってやるか」
「なんかまたやられそうだからやだ」
起き上がる気力もない。そんな俺を見下ろして、すっかり身支度も整えてスッキリした風な汀は、息を吐き出した。ヤレヤレ、って、腹立つな!
「ここで寝ていい?」
「風邪引くぞ」
「うー、じゃあどうしろって」
「風呂、入れてやるよ」
「え」
「暴れんなよ」
「え」
ちょっと意味がわからない。
よいしょ、とばかりに、汀が俺の首と膝裏に手を持って、持ち上げた。下半身丸出しのまま、所謂お姫様抱っこをされる俺である。このままだと落ちそうで怖くて、咄嗟に、汀の首に腕を回す俺も相当だけれども。
「ちょっ、なに、こわいこわい」
「暴れんな、落ちるぞ。風呂まですぐだ、我慢しろ」
「我慢って問題じゃ、うわうわうわ」
「うるせえな、落とすぞ」
今度は脅しだ。
大人しく口を噤むと、汀が歩き出して、そのまま風呂場まで連れていかれる。正直、腰っつーか尻がすげえ痛くて違和感があったから、大分、助かったのもある。いやだけど。いやだけど!
風呂場まで連れていかれた俺は、きれいにまるまる洗われました。無表情でごしごししてくる手が心地よくて、大人しくしていた。予想に反して汀は何もしてこなかった。
風呂から出た後は、寝間着を借りて、二人仲良くベッドで眠った。狭いとか文句を言われたけれど、知るかっての。
予想だにしないセックスで体力を奪われたからか、あっという間に眠りについた。
――もしかしたら夢なんじゃねえかな、全部。
そんな期待もあったけれど、朝起きたら隣に半裸の汀がいて、淡くも儚く崩れ落ちた。
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