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放課後の教室1

誰もいない放課後の教室。 透が用事を済ませて戻ると、机の上に座って彰広(あきひろ)が待っていた。 すでに大人の色香を持つ幼馴染みの顔は、西日を浴びていっそう男らしく見えた。 「先に帰ってくれて大丈夫だったのに」 「うるせぇ。さっさと荷物まとめろよ」 彰広はいわゆる不良なのだが、なぜか平凡な透としょっちゅう連んでいた。 「人の机に座るなよ」 小さくため息をついて、透は教科書を鞄に詰め込む。口は悪いが、こうして彰広に構われるのは好きだった。 俯いた透の顔を彰広はじっと見ていた。 「お前って、やっぱり童貞なの?」 「なっ!?」 いまだ透の机に座ったままの彰広の顔をバッと見上げると、ニヤニヤと悪い笑みを浮かべて、からかうような表情をしている。 自分の顔は真っ赤になっているだろう。 「お前には関係ないだろ!」 「幼馴染みとしては心配なんだよ。お前は奥手すぎていけねぇ。このまま一生童貞だったらと思うと……」 「うるさいな!」 彰広は色事に長けていて、高校生になってからは相手をとっかえひっかえにしてお盛んだった。 同じ男として情けないが、透は初心で奥手で、まだ誰とも付き合ったことがない。 「いいんだよ。そうゆうのは、ほんとに好きな人ができてからで!」 ハハッと彰広が笑う。 「そんなこと言ってたら、あっという間に中年になっちまうぞ。 三十超えて童貞喪失とか、恥ずかしすぎる」 今日の彰広は意地が悪い。 わざと透の苦手な話題をふってきているようだ。 「もう……いいから、帰るぞ」 教科書を詰め終え、彰広を見る。 彰広はやっぱり透の顔をじっと見つめていた。 「透、キスくらいは高校生のうちに済ませとけって」 「だから、その話はもう……」 「幼馴染みのよしみで俺が相手になってやるから」 「はぁ? なに言ってんの、お前」 「透みたいな奥手は、最初は経験豊富な相手がいいんだよ。俺とか」 ……からかわれている。 もう放っておいて帰ろうとすると、 「いい加減に……」 「透」 彰広に腕を掴まれた。その力の強さに少し驚く。 気付いたときには、彰広の顔が随分近くにあった。 大人びていて、整った男らしい顔立ち。 その強い瞳にまっすぐ視線を捕らえられ、何も言えなくなる。 「目、閉じろよ」 言われるままに目を閉じた。 唇に柔らかいものが触れる。 ヒクッと透の肩が小さく揺れた。 ただ触れるだけの、子供同士のママゴトのようなキスだった。 唇がそっと離れるのを少し寂しく感じた瞬間、 「んっ!?」 彰広に頭を鷲掴みにされ、ぐっと引き寄せられた。 「んっ! ぅむ……うっ……!」 彰広の舌が唇を割り開き、舌を絡められて、深く口付けられる。 「はっ……やめっ!……あ!」 透の口内を彰広の舌が傍若無人に暴れて、飲みきれない二人分の唾液が透の口から溢れた。 「……はぁっ!」 「脱げ、透。下だけでいい」 きつく抱き寄せて、透の耳に彰広が甘く命令する。

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