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第20話
「何?どうしたの?」
「いいから」
「ちょ!痛い!」
引き摺られるようにして連れてこられたのは資料室。
後ろ手に扉の鍵を閉め智輝が俺を壁に押し付けた
どきりと胸が鳴る。やっぱり好きだ…
「何のよう?」
「…」
智輝は無言だった。怖くなって俯くと顎をもたれ上を向かされた
「路夏…」
「…な、何?」
「由と、旅行なの?」
「そうだよ」
「だめ!」
「は?」
「由と二人はやだ!!」
「意味わかんない。何でそんなの智輝に言われないとならないの?」
「わかんない…でも…やだ」
「何かあったの?」
「ない」
智輝が変だ。迷子の子供のように不安な色を浮かべていた
「どうしちゃったの?」
「わかんない…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
「智輝…」
その時智輝のスマホが鳴った。
「智輝。電話だよ」
さっきまで泣きそうだったはずの智輝は次に顔をあげたときはいつも通りだった。さっきのが夢だったよう
相手は亜咲斗だったようだ。この学校では知らないものはいない人。学年首席。生徒会役員を勤めている彫刻のような美しさを持つ人。
「亜咲。え?今?2階の資料室だよ。ん?お話ししてた。わかった。すぐ行くね」
電話を切ると俺の存在を忘れたように智輝は去っていった…
こちらを一度も振り返ることはなかった。結局智輝が何をしたかったのかわからない
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