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第36話
「何で…そんな、急に…」
「兄に会ったから…かな…?俺は昔から兄に勝てたことはない」
「…」
「兄はね俺の自慢の人なんだ」
その表情を見ているだけで智輝がお兄さんを慕っていることはわかった。
でも由斗を見てみると目を伏せ苦しそうにしていた
「兄はね昔から何でもできて、優しくて、カッコ良くて…」
その後延々とお兄さんのいいところを話し続ける智輝。智輝から聞くお兄さんは非の打ち所がないほどの人だった
「やっぱり…俺は選ばれない…」
最後に俯き呟いた智輝の顔は笑っていた…どうすればいい?どうしたら泣かせてあげられる?
「智輝。俺は離れないから…だから…ここから出して?学校には行きたい。あんなにいい学校に頑張って勉強して苦労して入ったのに…。行けないのはやだ…智輝と出会えた大切な場所…俺にとっては必要な場所。だからお願い…ここから出して?…智輝」
「俺たちが急にいなくなったらまた琉輝さんが来てしまうかもしれない。もしかすると急に学校に来なくなった俺たちはお前には相応しくないって離れさせられるかもしれない。琉輝さんはお前のことが大切だから…そうなったら側にいられなくなってしまう…だから…ここから出して?俺もお前から離れないから」
「…ほんと?みんなみたいに急に離れない?」
「…智輝がもう他に恋人を作らないなら…俺たち以外を断ってくれるなら」
「…路夏…」
「だって他にもできたのなら俺らは必要ないって感じちゃう…俺らじゃダメなんだって思っちゃう…それはとても悲しい…」
「他に恋人を作らないならずっと側にいてくれるの?」
「うん。約束する。他に俺たちより大切な人ができたら…離れる…」
「とも。俺も路夏と同じ。お前が他に好きな人ができたら俺たちは離れる。お前に他に大切な人ができない限り離れない。俺たちから離れたいとか別れたいとか言わない」
「わかった…路夏。俺のこと好き?」
「好き。大好きだよ。智輝」
「由は?俺のこと必要?」
「必要だよ。とも。ともといると幸せだよ」
「嬉しい…うれしいよ…大好き!路夏。由」
そういうと俺と由斗にキスをして鍵を外してくれた。
必要とされたいだけ…自分の存在を確かめたいだけ…それでも…他に作らない限りは離れない…その言葉は俺が智輝を縛る鎖…離さないからね…智輝…
「智輝。ここどこ?」
「俺のお得意様のビルだよ。自由に使っていいって言われてる」
「所有者は?」
「冴嶋 密さん」
「冴嶋さん…」
「由斗知ってるの?」
「知ってるよ。それなら大丈夫だね」
「ん?」
「何でもないよ」
「ここ片付けるね。もう少しここで休んでて。さっきやり過ぎちゃったから辛いでしょ?ごめんね」
そういうと俺と由斗の頭を撫で部屋から出ていった
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