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第82話
智輝side
それから毎日のように路夏のところへ訪れた。
帰ってこないことはわかっているけれど声を掛け続けた
「ねぇ。路夏。俺の両親逮捕されたんだよ。何か悪いこと沢山してたみたい。俺も片棒担いでたはずだけど何故か俺は無罪放免になったんだ。きっと兄さんの残していた手記だったり由斗がかき集めてくれた証拠だったりがあったからかもね。俺ね沢山の人に支えられてたこと気付いたよ。早く路夏ともお話ししたいな…まだ眠いの?…」
「…」
「路夏。大好きだよ…世界中の誰よりお前が好き…」
「…」
「俺には何も無くなっちゃったんだけどそれでも側にいてくれる?」
「…」
「やっぱり俺の肩書きが好きだった?」
「…」
「路夏…路夏…早く起きて…路夏の声が聞きたいな…」
「智」
「由」
「路夏まだ寝てる?」
「…うん…ねぇ。路夏のご家族はどうしてるの?」
「…」
由は黙って首を横に振った…
「そっか…」
路夏の両親は里親。今海外に行っていてこちらにはいない。
子供の出来なかった夫婦には大切な息子のはずだった
沢山優しくして本当の血の繋がった親子のように仲が良かった…
でも…向こうに行って数ヶ月。母親が身籠り出産をした。そうしたら…一変した…あれだけ注がれていた愛情が路夏にまでは届かなくなった。
路夏は成績もいいし後継ぎとしては申し分無かったはずだった…でも…子供が出来た以上…路夏は用無しになってしまった…
路夏は両親の深い愛情と優しさが急に無くなったから本当は寂しかったはず…でも優しくしてくれた両親に迷惑は掛けたくないそう思い自分の本音に蓋をした…いい子であり続けた…
そうして優しさに飢えてしまっていた。
だから優しくされる人のことをすぐに好きになってたんだ…
俺のことも始めはそれで好きだと勘違いしていたんだ…
それなのに俺が路夏一人に優しい訳でもなかった…
苦しかったよね?ごめんね。俺ももっと早くに路夏への気持ちに気付けていればこんなことにはならなかったかもしれないのに…
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