102 / 321

第102話

「まだ琉輝さんが好き?」 「好きだよ…でももう琉輝さんはいない…」 「そうだね…智輝じゃだめなの?」 由斗にじっと見詰められ胸が熱くなる 「わかってるでしょ?」 「当然。いいんじゃない?自分に正直に…ね?」 「でも…俺は…智輝を傷付ける言葉を沢山投げ掛けたよ?それに智輝はもう俺じゃなくても支えてくれる人は沢山いる。それに…智輝には温かい家族作って欲しい…奥さんがいて…子供がいて…そんな普通の幸せな家族…」 「そうだね。俺もそう思う。でもね。智輝にとってそれが幸せじゃない。智輝がそばにいたいのは路。君だけだよ?君と家族になりたいんだ。じゃないとこんなに何年も待ってないよ。智輝の幸せは路が決めることはできない。智輝が決めることだよ」 「…本当にいいのかな?だって…俺は…ずっと一緒にいるって約束したはずなのに…心変わりだってしたし…」 「でも…路の中には誰がいたの?…」 「…そんなの…」 「路。あの頃本当は誰といたかったの?」 わかってる…わかってるけど…これを認めると琉輝さんを裏切ることになっちゃう… 「目覚めたとき…最初に会いたかった人は誰?」 「…俺…最低だよね…みんなを振り回して…そして…苦しめて…」 「路をそう思う人なんて誰もいない。だから自分を誤魔化さないで」 強い眼差しに吸い込まれそう… 「俺は…」 その時部屋の扉がノックされた。 「はい」 「路夏。ただいま。今日は調子どう?」 「大丈夫だよ」 「よかった。久しぶり…由」 「久しぶりだね。智。」 「…?二人して深刻な顔してどうしたの?」 「ん?路にね愛の告白してた」 「は?」 「冗談だよ。そんな怖い顔しないでよ。このヤキモチ妬き屋さん」 「だって…俺は…路夏が好きだから」 「知ってる」 「路夏?何で…泣いてるの?」 「あれ?何でかな…わかんない…」 「今話してたことは路に聞いて。俺はそろそろ行くね。また明日会いに来るね」 ヒラヒラと手を振り帰っていく由斗を見送った 扉が閉まるとゆっくりと智輝が近付いてきて俺の髪を鋤く 「由に何か言われたの?路夏」 「…」 無言で首を横に振る 「…ねぇ路夏…抱き締めていい?」 「…」 智輝温かい…ねぇ…俺…またお前の手を取ってもいいのかな? 「路夏…俺はね路夏のことが大好きだよ。でもね…路夏が迷ってることもわかってる。ごめんね。悩ませて…俺は勝手に路夏のこと好きでいるけど…路夏にその気がないならそれでもいいんだ。ただ側で見守らせて…」

ともだちにシェアしよう!