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第102話
「まだ琉輝さんが好き?」
「好きだよ…でももう琉輝さんはいない…」
「そうだね…智輝じゃだめなの?」
由斗にじっと見詰められ胸が熱くなる
「わかってるでしょ?」
「当然。いいんじゃない?自分に正直に…ね?」
「でも…俺は…智輝を傷付ける言葉を沢山投げ掛けたよ?それに智輝はもう俺じゃなくても支えてくれる人は沢山いる。それに…智輝には温かい家族作って欲しい…奥さんがいて…子供がいて…そんな普通の幸せな家族…」
「そうだね。俺もそう思う。でもね。智輝にとってそれが幸せじゃない。智輝がそばにいたいのは路。君だけだよ?君と家族になりたいんだ。じゃないとこんなに何年も待ってないよ。智輝の幸せは路が決めることはできない。智輝が決めることだよ」
「…本当にいいのかな?だって…俺は…ずっと一緒にいるって約束したはずなのに…心変わりだってしたし…」
「でも…路の中には誰がいたの?…」
「…そんなの…」
「路。あの頃本当は誰といたかったの?」
わかってる…わかってるけど…これを認めると琉輝さんを裏切ることになっちゃう…
「目覚めたとき…最初に会いたかった人は誰?」
「…俺…最低だよね…みんなを振り回して…そして…苦しめて…」
「路をそう思う人なんて誰もいない。だから自分を誤魔化さないで」
強い眼差しに吸い込まれそう…
「俺は…」
その時部屋の扉がノックされた。
「はい」
「路夏。ただいま。今日は調子どう?」
「大丈夫だよ」
「よかった。久しぶり…由」
「久しぶりだね。智。」
「…?二人して深刻な顔してどうしたの?」
「ん?路にね愛の告白してた」
「は?」
「冗談だよ。そんな怖い顔しないでよ。このヤキモチ妬き屋さん」
「だって…俺は…路夏が好きだから」
「知ってる」
「路夏?何で…泣いてるの?」
「あれ?何でかな…わかんない…」
「今話してたことは路に聞いて。俺はそろそろ行くね。また明日会いに来るね」
ヒラヒラと手を振り帰っていく由斗を見送った
扉が閉まるとゆっくりと智輝が近付いてきて俺の髪を鋤く
「由に何か言われたの?路夏」
「…」
無言で首を横に振る
「…ねぇ路夏…抱き締めていい?」
「…」
智輝温かい…ねぇ…俺…またお前の手を取ってもいいのかな?
「路夏…俺はね路夏のことが大好きだよ。でもね…路夏が迷ってることもわかってる。ごめんね。悩ませて…俺は勝手に路夏のこと好きでいるけど…路夏にその気がないならそれでもいいんだ。ただ側で見守らせて…」
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