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空雅の場合/15
八尋side
空ちゃんが泣いてた…初めてみた涙…あぁ…まだあんなに彼のことが…
まさかあの人だとは思ってなかった…同じ名前だし空ちゃんと同い年だし…でも…
もしも仮に空ちゃんの言う“ともき”があの人なら…俺には敵わないって思ってた…なのに…
「本人かぁ…きっついなぁ…」
確かに俺と見た目の雰囲気は似てるかもしれない…でもあの人の人間性や仕事への誇りやその他諸々“醒井智輝”という人は非の打ち所がない人…俺なんて足元にも及ばない…
空ちゃんの涙を見てもう俺には為す術はなくて尻尾を巻いて逃げてきてしまった…
「なっさけないないなぁ…」
とぼとぼと談話室に行き自販機で飲み物を買って息を吐く…
空ちゃん…あの人は俺と重ねていい人じゃないよ…あの人すごい人なんだよぉ…
一人では心細くて…でも先に帰りたくもなくて…通信機器の使用が許可されている場所でメッセージを送る
“空ちゃんの想い人醒井さんだった…”
するとすぐに折り返しの連絡がある
『もしもーし!!やっちゃん!!!生きてる?息してる!?大丈夫?』
『してます…どうにか生きてます…美也ぁ…もう…俺頑張れないよぉ…だってぇ敵うわけないじゃん…苦しいよぉ』
『恋愛マスターの僕に聞かせてくれなぁい?』
『何それ…ださい…』
『いいの。僕が可愛いから』
『あっそ。まだ俺空ちゃんの友達の病院なの。だから空ちゃん送ったらまた連絡するね』
『わかった。待ってるね』
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