200 / 321
空雅の場合/14
「うん…今はわかるよ…みんながどうしてあんなこと突然言ったのかも…律が本当は俺を求めていなかったことも…亜咲斗の本当の想いも…それに…両親や兄さんが…これまでしてきたことも…兄さんの路夏への想いも…
…あのときがあったから俺は本当を見つけられた。
空雅。ごめんね…痛かったよね?辛かったよね?何もしてあげられなくてごめんね
でもね…気が付いちゃったから…俺が本当に求めているものがなんだったのか…今一番側にいて欲しいのは誰なのか…だから…ごめん…
ねぇ空雅…俺が言えた立場じゃないんだけど…俺ね空雅と清澄さんはお似合いだと思う…今は…空雅にとってあの人は沢山いるうちの一人なのかもしれない…でも…あの人はきっと君を幸せにしてくれる人だって俺確信しちゃった…ねぇ。空雅…もう少し清澄さんのこと見つめてみて?」
「僕は…あの人にともを重ねてた…」
「うん…わかるよ…似てるって初めてあの人と出会ったとき思ったから…」
「だからね…やっぱり八尋さんを…そういう風に見てあげられないし八尋さんだって僕なんて沢山いるうちの一人。僕はまだとものことが好き…大好き…それに八尋さんは僕じゃない本命の人だっていると思うの。だから…」
「ねぇ。空雅。君は気づいてないの?あのね、空雅はどうでもいい人を名前では呼ばない。あの人とかあいつとかそんな風にこれまで俺に話してくれてた。でもね八尋さんって名前だけはよく言ってたよ?だから空雅にとって八尋さんは特別な相手だって俺は感じてたよ?ねぇ。空雅…考えてみたら?俺の勘が正しければ…清澄さんは空雅のこと…でも…空雅出会ったときに言っちゃったんでしょ?唯一はいらないって。だから…きっと我慢してるんじゃないかな?俺と似てるなら…あの人は空雅を好きなはずだよ」
「そんなことないよ。あの人には…綺麗な恋人がいる…」
「それ。本人に聞いたの?」
「うん。特別な相手でしょ?って聞いたらそうだよって」
「特別な相手…ね。それは恋人ってことなの?俺にとっては特別な相手は路夏。でも路夏だけじゃない。由斗も律も京も深雪も賢人も更紗も亜咲斗も兄さんも…勿論空雅だって清澄さんだって大切な人だし特別な相手だよ」
「…でも…智輝の勘違いだったら?」
「勘違いなんかじゃないよ。」
「…」
「もし清澄さんが空雅を唯一の人にしたいって…好きだって思っていたら空雅は嫌?二度と会いたくない?一緒にいたくない?」
「…わかんない」
「…空雅…もう…俺に縛られないで…俺はもう…君にキスはできないし前みたいに君を抱いてはあげられないから…俺は路夏に嫌われてても路夏意外と歩く選択はない。
ごめん…空雅。きっとね…君は過去に理不尽な別れをした俺とどうこうなりたい訳じゃないと思う。ただうまく切り替えがいっていないだけ。だって空雅は俺を見詰めても昔みたいに頬を染めたり胸が高鳴ったりしないじゃない。だからこれから進んで。空雅。大好きだったよ。でも、俺は路夏が好き。路夏を諦められない…路夏が大好きなんだ。だから…」
「ともぉ…」
「…やっと…離してあげられるね。バイバイ。空雅…これからは友達でいようね。」
「とも…智輝…」
「うん。それに…本当は気がついてるでしょ?その事は空雅が一番。だから今日は彼を恋人として紹介してくれたんでしょ?先に進むために」
「…僕は…」
「大丈夫だよ。空雅にはわかってるから。ほら…笑って。空雅の笑顔が俺は大好きだから」
「智輝は本当に勝手で…本当にずるい人」
「ごめんね。こればっかりは変えられなくてさ」
「もう!…ありがと…」
ともだちにシェアしよう!