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空雅の場合/57
紫水side
「好きだよ…空雅…」
空雅は沢山いるうちのセフレの中でもずば抜けて相性のいい相手。だからとても気に入っていた。ただそれだけだったはずなのに…
その空雅を特別な存在だと思い始めたのはいつだったか?
ねぇ。空雅お前は気付いてる?
俺といるとき同じセフレの話を何度もしていたこと。
始めはなんとも思ってなかったそれも時がたつにつれて俺の中で忘れていたはずの嫉妬心が生まれたんだ。
どうすれば俺のこと切らないでくれるのかな?沢山沢山考えた。
その人はかなり優しく抱いてくれるって聞いてた…だから俺は逆のことを…そう思ってセックスを覚えたばかりの獣みたいに激しく抱き続けた。その人と違う方法なら…それなら依存症である空雅は俺も呼んでくれるでしょ?
毎日会いたかったけど空雅は本気になられたら逃げ出す子。だから気持ちなんか伝えられないし飽きられないよう必死だった…
その空雅が今ここに…俺の腕の中にいてくれて安心したように眠ってくれてる…
ねぇ…お前は本気になんてならないってずっとずっと言ってたよね?
それなのに…好きな人ができたなんて…酷くない?
確かに木築 萌葱は綺麗だし可愛いし人気もあるしいい人なのが雰囲気から滲み出てる…
空雅が安心できる相手なのかもしれない…でもさ…それはきっと勘違いだと俺は思うんだ…
その人に愛する人がいるから…空雅に気持ちがないから…本気で好きになってもらえることはないから…そう思って好きになったつもりでいるんじゃないのかな?
好かれるのを極度に恐れる空雅が恋できるのは叶わない相手だからでしょ?
俺はねお前は本当は名前をよく聞くあの“八尋さん”って人が本当は好きなんじゃないかな?って思うんだ
今日助けてくれたのもその人だった…たまたまそこにいたからって空雅の目が覚めるまで付き添ってくれたって…そんなのただのセフレだけじゃできないよ?
だからその人はお前のこと…好きなんだと思う。ううん…そう確信してる…
俺は萌葱より八尋さんが怖い…俺から空雅を奪っていかないで…あの時みたいに…
その時空雅のスマホが着信を告げる。あまりにも大きな音でなるから空雅が起きちゃう…
ゆっくり空雅を離してリビングでけたたましく鳴る空雅のそれを手に取る。
画面に映されていた名前…“八尋さん”
きっと空雅の体を心配して連絡してきたのだろう…
やだ…そんなの…ダメだとわかってるのに…俺はその電話をとった…
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