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空雅の場合/58

八尋side 何度目かのコール。出ない… 単純に眠ってしまったのか…それとも… 諦めて切ろうとしたとき画面が通話の表示に変わる 出てくれた!嬉しくて思わず笑みが溢れたけれど…それは一瞬の出来事だった… 『もしもし』 『…あの…』 『空雅は俺の隣で眠っています…』 『…空ちゃんの…空雅くんの体調はどうですか?落ち着きましたか?』 『えぇ。落ち着きましたよ。今日は俺の空雅を助けていただいてありがとうございました。八尋さん』 『俺の…』 『あれ?聞いていませんか?俺恋人なんです。数ヵ月前から。あなたの話は良く聞いていたのでてっきりご存知かと…』 そんなの…空ちゃん言ってなかったのに…でもそれなら俺のできることはもう何もない… 『…そうですか…では…もうご連絡しません…』 『そうしていただけると有り難いです。空雅はあなたを…いえ…今日は本当にありがとうございました』 耳に心地いい懐かしい声に唇を噛む…独特のちょうどいい高さの良く通る声…このまま切ってしまえば良かったのに…でも…あいつを知る…あいつを愛した…相手だから…俺は… 『…しーちゃん…だよね?』 『…え…?』 思わず聞いてしまった…多分俺の名前は彼は知らないのかもしれない…そんなに多くはない名前のはずなのに俺が俺だと気が付いていないから 『…俺…清澄です…』 『やっちゃんさん…』 『まさか…また…君と同じ人を好きになるときが来るなんて…ねぇ。しーちゃん…空ちゃんを…幸せにしてね?そして…君も幸せになって…』 『…』 『…俺は空ちゃんに気持ちを伝えられなかった…でも空ちゃんが選んだ人が君で良かった…良かった…君に大切な人が出来て…』 『…』 『今さらだけど…充を…守れなくてごめん…君から…奪ってごめん…』 どんなに謝っても許されるわけはないけれど

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