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空雅の場合/59
八尋side
充が亡くなったあの日…元々のデートの予定だった。
同棲しはじめて間もなくて休みの日は二人っきりでイチャイチャしてたくてずっと自宅で過ごしてたけどその日は記念日だったから外で食事しようって約束してた
わざわざ待ち合わせをしてウィンドーショッピングして映画見て…他にも色々計画してた。付き合いたてに巡ったところを回ろうって約束してた…
それなのに…急遽仕事でトラブルが発生し俺でないと対処のしようがなくて仕方なく仕事に赴くことになってしまった。
残念がる俺をあやすように充が俺をギュッと抱き締めて笑いかけてくれた
「充!ごめんね!仕事が…もう!楽しみにしてたのにぃ…」
「やっくん。俺は大丈夫だよ。仕事頑張ってね。家でご飯作って待ってるね」
「ごめん!せっかくのデートだったのに…」
「ふふ…大丈夫。だって毎日一緒にいるじゃない。ね?責任のある仕事だもん。仕事頑張らないと。俺はやっくんの仕事してるかっこいい姿も大好きだよ!だから。頑張っておいで。たーっくさんやっくんの好物を用意しておくからね」
渋々頷いて玄関を開ける
「行ってらっしゃい!」
そういってキスをしてくれて可愛い笑顔で見送ってくれた姿…
これが俺が最後に見た動く充の姿…
そして次に見たのは傷だらけになって眠るように横たわってる…冷たくなった姿…
死因は事故…でもそれだけじゃなかったのはそれから数日後に知ることになる
「充…レイプされてた…」
「え!?」
「あの日…買い物に行った帰り…前々から充を狙ってたやつらに連れてかれて…」
真実は一人で抱えるのは苦しすぎて…充の深い深い傷なんか自分の中に仕舞込んで伝えなくてもよかったはずのに…充の兄である飛弦さんに話してしまった…
充は女の子みたいな容姿をしてた。仕事はカフェの店員。制服は白シャツに黒いエプロンといえどこにでもあるようなシンプルな装い。
ただ中性的な見た目故に男女問わず毎日のように告白されてた。
人当たりのいいふんわりした笑顔と優しさ…物腰しの柔らかさ。男性とは思えないくらい華奢な体。魅惑的な腰回り…人を引き付けてやまない大きく潤んだ瞳…
充が発見されたのはカフェの近くの廃工場付近の交差点。それが凄く不思議だった。
だって俺たちの家ともいつも行くスーパーとも方向違うし…だから…真実が知りたくて…轢き逃げの犯人見つけ出してやりたくて…俺なりに色々調べた…
轢き逃げだったから警察の方でも色々調べられたみたいだった…
そこの廃工場から服を乱されて必死の形相で走り出して来る充の姿が防犯カメラに映ってた。
その工場を調べたら充以外のDNAが採取された…それも一人だけのものじゃない…多数の…
医師は気付いていたみたいなんだけど…その時俺や家族には伝えられなかったらしい…だって…そうだよね?レイプされた場所からやっとの思いで逃げたはずだったのにさらに轢き逃げにあうなんて…
その後レイプをした相手も轢き逃げの相手も随分と時が立ってから逮捕され今はまだ檻の中だ
「やっちゃんさん!!それどういうこと!!」
そう叫び部屋に滑り込んできたのは紫水だった…俺は言葉もでなくて唇を噛み締めてた…
「お前…いつここへ?」
「さっき…お線香あげに来たら…おばさんが上に飛弦さんいるからって…だから話そうと思って…何で?何で?みーがそんな目に遭わないとならなかったの?その日はやっちゃんさんとデートだったのに!!嬉しそうに話してたのに!!何で?何で?一緒にいたあんたが助けてやれなかったの!?ねぇ!?ねぇ!こんな事になるなら!!こんな事になるならあんたにみーを託すんじゃなかった!!どんな手を使ってでも俺が引き留めておくんだった!!あんたのせいだ!!」
紫水が充のことを好きなのは知っていた…だから必死で頭を下げて漸く許してもらえた充との交際だったのに…その通り…俺は…充を守れなかった…最低だ…
「しー。そんなの八つ当たりだよ。清澄さんだって好きでその日一緒にいなかったんじゃない。急な仕事が入ってどうすることもできなかったんだ」
「充との時間より仕事をとったってことでしよ?前々から約束してたくせに!!」
「しー!いい加減にしろ!苦しいのは…今一番苦しいのは清澄さんだ!」
「…っ…それは…っ…あぁぁぁぁ!!!!」
泣き崩れる紫水に手を差しのべてやることもできなかった…
それ以来しーくんとは会ってなくて…まさか…また同じ人を好きになってしまうなんて…
充を守れなかった俺が…しーくんの思い人である空ちゃんを奪うなんて…出来るはずない…
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