10 / 32
お泊まり 5(side:斉藤先生)
恋愛感情を抜きにしても佐藤くんと話すのは楽しく、食事を終え、夜が更けて佐藤くんの布団をリビングに敷き交代でシャワーを浴びた後も、俺たちはまだ話を続けていた。
ちなみに佐藤くんがシャワーを浴びている時はつい聞き耳を立ててしまい、その様子を想像してちょっと危ない状態になってしまったので、書斎に避難して「佐藤くんは二次元、佐藤くんは二次元」と呪文を唱えてなんとか乗り切った。
そしてもちろん、風呂上がりでほかほかしてリンゴのようなほっぺたになった佐藤くんを見て、再度心の中で呪文を唱えなければならなくなったのは言うまでもない。
俺たちの話は趣味のSFのことや創作論だけでなく、お互いの個人的なことにまで及んだ。
佐藤くんは俺のファンなので俺のことをいろいろと聞きたがったし、俺は俺で「最近の大学生について知りたい」という名目で佐藤くんの日常を教えてもらうことができてうれしかった。
対談という仕事から離れたのでもういいだろうと、俺の方は対談の時は「佐藤さん」と読んでいた呼び方を「佐藤くん」に変え言葉使いも普通にしているが、佐藤くんの方は未だに「斉藤先生」だし敬語を使っている。
本来なら俺の方から「敬語じゃなくてもいいよ」と言ってあげるべきなのだが、佐藤くんが俺のことを敬ってくれるのが心地よくて、そう言ってあげることができない。
それに、佐藤くんが話に夢中になり過ぎて時々無意識のように敬語が抜けてしまうのも、また可愛いのだ。
ともだちにシェアしよう!