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酔っぱらい 1(side:佐藤くん)
そんなふうにして順調に東京での生活を送っていたある日のことだ。
その夜は斉藤先生は編集さんと打ち合わせがてら飲んでくるというので、僕は自室にこもって小説を書いていた。
斉藤先生がいる時は夕食の後しばらくリビングでくつろぐことが多いけど、1人だとそういう気にもならなくて、残り物で夕食を済ませて、すぐにまた部屋に戻って書き始めた。
「あっ、もうこんな時間だ。
斉藤先生が帰ってくる前に風呂行っとかないと」
夢中になって書き進めていると、いつの間にか時間が経っていて、僕は慌てて立ち上がった。
斉藤先生が帰ってきた時すぐ風呂に入りたいかもしれないし、僕はその前に済ませておいた方がいい。
「今日は暑いし、もう短パンでもいいかな」
梅雨に入って暑くなってきたので、そろそろ風呂上がりに長ズボンは暑いだろうと、Tシャツ短パンとパンツを用意して、僕は風呂に行った。
風呂から上がると、ちょうど固定電話が鳴りだした。
固定電話は斉藤先生専用なので、気にせず体を拭いて服を着ていると、留守電に切り替わった電話のスピーカーから斉藤先生と一緒に飲みに行った編集さんの声が聞こえてきた。
編集さんが留守電に「佐藤さん、もしいらっしゃったら電話に出てもらえないでしょうか」と呼びかけるのが聞こえたので、僕は慌てて電話に出る。
「あ、佐藤さん。出てくれてよかったです」
電話の向こうから、編集さんのほっとしたような声が聞こえる。
「すみません、実は斉藤先生に飲ませ過ぎてしまって、お一人で歩けない状態なので、お部屋まで連れて行きますから、鍵を開けてもらえないでしょうか。
今タクシーで、もう少ししたらそちらに着きますので」
「わ、それは大変だ。
それじゃあ、1階のエントランスまで迎えに行きましょうか」
「あ、そうしてもらえると助かります」
「はい、じゃあお待ちしてます」
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