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昨夜見た夢(side:斉藤先生)

 目が覚めると、ひどく喉が渇いていた。  ベッド脇のサイドテーブルに、半分減った水のペットボトルがあるのを見つけて一気に飲む。  喉が渇いていたのは、昨夜少々飲み過ぎたせいだ。  たいした量じゃないと思っていたが、ここ最近は酔っぱらって佐藤くんに手出ししてしまうのが怖くて、うちではビール1本くらいしか飲んでなかったので、酒に弱くなってしまっていたかもしれない。 「ああ、それにしてもいい夢だったなあ」  昨日見た夢には佐藤くんが出てきた。  風呂上がりの短パン姿で夢に出てきた佐藤くんは、俺のためにお風呂に入って待っていたとかわいいことを言うので、遠慮なくいただくことにした。  夢の中の佐藤くんは俺が何度も妄想した通りに、慣れてないのに感じやすくて、かわいい中に時折色っぽい声や表情が混じるのがたまらなくて、めちゃめちゃ興奮した。  佐藤くんの短パンの中身を見る前に夢が終わってしまったのは惜しかったが、それでも十分に素晴らしい夢だった。 「しかし、リアルな夢だったな」  夢なのに、佐藤くんの匂いも肌触りも、舌で弄んだ乳首がだんだん固くなっていく感触さえも、全てが本物のようにリアルだった。  まるで、夢じゃなくて、現実の出来事のように。 「まさか本当に現実……いや、それはないな」  もしもあれが現実だっとしたら、いくら佐藤くんが僕のファンだといっても、さすがに抵抗するはずだ。  確かに最初にキスした時は俺の肩を押したり大声を出したりして抵抗していたが、その「何が起こっているのかわからない」と混乱しているようなウブな様子は、完全に俺の願望の通りだったし、その後に乳首をなめた時には口ではダメと言いつつもされるがままだったので、やはりあれは夢だったのだろう。 「さて、いいかげん起きるか」  いつまでも夢のことを考えていても仕方がないので、俺はベッドから起き上がった。  少し頭はぼんやりとしているが、二日酔いというほどではないので、シャワーでも浴びれば目が覚めるだろう。  寝室のドアを開けると、みそ汁のいい匂いがした。  佐藤くんがキッチンに立っている朝の幸せな風景に思わず顔がニヤけたが、その佐藤くんが俺に気付いてこちらを向いた瞬間、俺の幸せな気持ちはすぐに消えてしまった。 「おはようございます」 「お、おはよう……」  佐藤くんにあいさつを返しながらも、俺は内心ものすごく焦っていた。  ねえ、その赤い目とはれぼったいまぶたは何なの?  まさか夕べ、眠れなくなるような大事件でもあったの?  そう佐藤くんに聞いてみたくなるが、その大事件の内容にものすごく心当たりがある俺としては、怖くてとても聞けそうにない。 「もう少しで朝ご飯できますから、シャワーでも浴びてきたらどうですか?」 「あ、うん、そうさせてもらうよ」  そう答えて俺が浴室に行こうとすると、佐藤くんが「あ」と声をあげた。 「すみません。  ちょっとお話ししたいことがあるので、朝ご飯の後で時間もらえますか?」 「あ……はい」  いつも通りのかわいい笑顔なのに目がまったく笑っていない佐藤くんに気押されて、思わず丁寧な言葉で返事をしてから、俺は逃げるようにして浴室に向かった。

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