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質問 2(side:斉藤先生)

「僕、斉藤先生と同居するの、嫌じゃありません」 「え? なんで?」 「それはその……僕も、斉藤先生のことが好き、だからです……!」 「えええ?」  思い切って言っちゃいます!という感じで発せられた佐藤くんの言葉は、信じられないようなものだった。 「ええ? なんで?  佐藤くん、ゲイじゃないよね?」 「えっと、ゲイかどうかは正直よくわからないんですが……。  僕、今まで片思いも含めて恋愛の経験自体がほとんどなくて、こういう気持ちになったのが初めてなので……」 「え、でも、オナニーする時は、女の子のエロ本見たりするんだろ?」  俺の遠慮のない質問に、佐藤くんはちょっと赤くなったが、それでもちゃんと答えてくれた。 「それが、女の子のエッチな写真とか見ても興奮しないので、いつもただこするだけって感じで……。  だからと言って同級生の男の裸見てもドキドキするわけじゃないんで、ゲイってわけでもないのかなと思ってたんですが」 「ああ、そういう感じなんだ……」  確か無性愛者というのだったと思うが、たまに異性にも同性にも性欲を感じないという人がいると聞いたことがある。  多分佐藤くんもそういう感じなのだろう。 「けど!  けど、夕べ斉藤先生にああいうことされて、その、感じてしまって、それで何でなんだろうって考えてみたら、斉藤先生のことが好きなんだって気付いて」 「え、いや、それって」  佐藤くんの言い方だと、昨夜のことがあって初めて自分の気持ちに気付いたということになる。  でも、それは。 「それは勘違いしてるだけなんじゃないかな。  佐藤くんは誰かと性的に触れ合うこと自体、初めてだったんだよね。  だったら、その初体験の衝撃とか興奮を、恋愛感情だと勘違いしてるだけで……」 「そんなことありません!」  俺の推論を、佐藤くんが叫ぶようにさえぎる。 「それは確かに、きっかけは昨日のことかもしれませんけど、でも僕、ちゃんと斉藤先生のことが好きです!  恋愛経験がないから今まで気が付かなかったけど、斉藤先生のこと前からかっこいいって思ってたし、こんなに尊敬できる人も他にはいないし、それに一緒に暮らすようになって毎日がすごく楽しいし。  それに、斉藤先生は性的な興奮を恋愛感情と勘違いしてるんだって言いますけど、そもそも好きでもない人、しかも同性に触られて興奮するはずがないじゃないですか!」 「いや……悪いけど、それは普通に興奮する男も多いよ。  男って恋愛感情と性欲は別のことが多いし、それに男同士の方が感じるツボを心得てるからノンケの男でも掘ったり掘られたりするところまで行かなければ平気ってこともあるし」 「それじゃあ、僕が先生に掘られるところまで行っても大丈夫だったら、僕がちゃんと先生のこと好きだって信じてもらえますか?!」 「ええ?  いや、そういうことじゃなくて……」  なんだか話がおかしな方向に行き始めている。  もし佐藤くんが俺に掘られて平気だったとしても、それは佐藤くんがゲイだと証明されるだけで、俺を恋愛の意味で好きだという証明にはならないのだが、佐藤くんはすっかり興奮してしまっていて、そのことに気付いてないみたいだ。 「僕、先生になら掘られても平気です。  むしろ、掘られたいです!  なんだったら今からでも証明してみせます!」  そう言うと佐藤くんは俺の手を引っ張って立たせて、俺の寝室の方へ連れて行こうとした。 「え、ちょっと、待って」 「待ちません!  ……それとも先生は僕のこと掘りたくないんですか?!  僕のこと、好きなんですよね?」 「それは好きだし、掘りたいっていうか抱きたいけど、でも」 「じゃあ、いいですよね?!」 「えーと……はい」  佐藤くんの剣幕に押され、俺はついうなずいてしまった。

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