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第三章 濡れる瞳の奥には。

 今日から俺は朝一で登校だ。今までのツケがまわってきたというか、これが普通なんだろうけれど。早起きがしんどくて、これを普通にやってのける他の生徒たちを心底尊敬しながら俺はやっとの思いで教室に向かっていく。  階段をだらだらと昇って、あくびをして。だるいなあ……と頭の中で何度も呟いていると……前方に、華奢な後ろ姿。あれ、と思ってよくみてみれば、芹澤だった。昨日やり過ぎたし気まずいな、と思った。けれど、このまま避けていたらタイミングが掴めないままずっと逃げることになりそうだと考え直して、俺は意を決して階段を昇る速度を速めていく。 「芹澤、」 「……!?」  声をかければ芹澤は驚いたように振り返って、そして俺を認識すると同時にこの世の終わりを見たなんて顔をして見せた。しかし、すぐにいつものきかない顔付きになると、舌打ちをして一言、 「ウザい」  とだけ言って俺から逃げて行ってしまった。  取り残された俺は、そりゃこうなるよな、と納得しながらも、逃げられてしまったことに無性にムシャクシャしたし、そしてなぜか寂しさを覚えていた。

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