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第五章 駅のホームと眩しい君。
瞼の裏が明るくなる。ああ、もう朝がきたのかとうんざりとしてしまった。朝がきた瞬間に今日の夜またこの布団で寝ることを楽しみに起きる、そんな毎日。ひどく怠惰な人間だな、と自分でも思う。今日も俺はしんどい朝を乗り切って一日を迎える――
「うおっ……」
はずだったが、目を開けた瞬間にそんなだるさは吹っ飛んでしまった。
「あっ……」
「せ、芹澤……」
芹澤が、至近距離で俺の顔をじっとみていたのだ。俺よりも先に起きていたらしいけれど……起きてからずっとこうして俺の顔をみていた、のだろうか。
「なにしてんの?」
「えっ……い、いや、べつにっ」
たぶん、俺の予想通りだった。芹澤はじっと俺の顔をみていたらしい。声をかければかあっと顔を赤くして、ぱっと飛び起きてしまった。
体を起こした芹澤は、ちらちらと俺を見ながらそわそわとしている。口元をスウェットの袖に隠れた手で隠して、恥じらうように俯いた。
さて、この芹澤は何に恥らっているのでしょう。心当たりが多すぎて、俺は思わずにやけてしまう。昨日抱きしめあったことか、ちょっとエッチなことになったことか、見つめ合いながら寝たことか、それとも今寝ている俺の顔を見つめていたことか。いずれにしても可愛いもので、きゅーんと胸が締め付けられる。
「おい、芹澤」
「えっ、……んっ、」
そんなに恥ずかしがられると、余計に照れさせたくなる。俺は背を向ける芹澤を後ろから抱きすくめて、腕の中に閉じ込めてやった。そうすると芹澤は、かちんと固まって、ぼぼっと顔を更に赤くする。
「おはよ」
「……っ、おはよう、ございます……」
耳元で挨拶してやると、芹澤はしどろもどろになりながらも絞り出すような声で返してくれる。今日は突き飛ばしてこないなって思って肩口に顔を埋めてみると、芹澤はぎゅっと目を閉じて、俺の腕を握りしめた。
このまま芹澤のことを可愛がっていたいな。そんな欲望が溢れてくるけれど、時間は残酷だ。
「……支度するか」
「……、ん、」
芹澤を解放して、ベッドから降りる。振り返ってみれば芹澤は放心したようにぽーっとしていて、また食べたくなるような顔だなあと思ったけれど、なんとか俺の理性が勝利した。
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