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 避けられて、避けられて、とにかく避けられて。俺が話しかけられないようにうまく避け続けていやがる芹澤を、ようやく捕まえたのは芹澤にキスをされてから約一週間後のこと。金曜日の放課後のことだった。 「おまえっ……ようやく、捕まえたぞ」 「なっ……き、嫌いって言っただろ! もう近づいてくるなよ!」 「ばかやろうおまえ……今日は約束の日だぞ」 「……約束?」 「そうだよ、約束! 週末に一緒に行きたいところがあるって言っただろ! おまえは約束を破るのか!」  そうだ、今日は芹澤とデート(と言う名の天体観測)をする予定だった日だ。俺は単に、芹澤と話がしたくて捕まえたわけだけど、ちょうどこの日だったため口実にその約束を使ってみる。そうすれば、元々プライドの高い芹澤は、案の定動揺してくれた。約束を破るという行為に抵抗があるようだ。俺と話したくないけど、約束を破りたくない……といった風に迷っている。 「……今日で、藤堂と会うのは最後にするから」 「……ふうん、あっそう」  芹澤は寂しげに俯いて、そう言う。本心の言葉じゃないな、ということくらい俺だって気付いた。でもここでそれを言及なんてしたら、今度こそ芹澤は逃げてしまうかもしれない。とりあえずはしっかり話す場を設けてないといけない、そう思って俺は色々と言いたいのをグッと堪える。 「……じゃ、生徒会終わったら駅までこいよ」 「……スマホでメッセージ送るから、そうしたら駅まできて。ちょっと遅れていく」 「? 生徒会、遅くなりそうなのか?」 「いや……べつに」  あれ、これはメッセージ送るとか言って送らないなんてこともありえるぞ。そう思って俺はヒヤッとしたけれど、ここは芹澤にかけるしかない。  どうかちゃんとメッセージを送ってきてくれ……! そう祈って、俺はその場は芹澤と別れたのだった。

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