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第八章 Please keep holding my hands.
空を、美しいと思ったことはない。
海に、焦がれたことなどない。
大地を、駆けたいと思ったことなどない。
いつからか、「色」がわからなくなっていた。聞こえもしない俺を罵倒する言葉が聞こえるようになっていた。白いモヤのような幻覚が見えるようになっていた。自分の感情が制御できなくなっていた。医者からは精神の薬を処方されたけれど、それは飲まなかった。
自分がオカシイのか、そうじゃないのか。そういった薬を出されるような状態なのか、そうじゃないのか。そんなことは、興味がなかった。どうでもよかった。
ただ、死にたかった。痛いのが怖くて、死ぬことはできなかった。
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