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 身支度を終えて、タクシーを呼ぶ。タクシーが来るまでに5分ほどだけかかるらしく、俺とゆうは外にでて待っていた。相変わらず奇声をあげている隣人の声を聞きながら、眩しすぎる朝日をあびて、俺はぼんやりと空を眺めていた。  白い。もはや、空なのかもわからないくらいに、白い。色盲を通り越して、目が見えなくなっているのかと、そう思うくらい。このまま藤堂に俺の存在すらも忘れられていって、そして藤堂のなかで俺が消えると同時に、現実の俺も消えるのかもしれない。今、俺はそう心が乱れている自覚はないけれど、なにも感じない、この感覚はおかしいと、それくらいはわかる。ほんとうに、狂ってしまう一歩手前なのかもしれない。 「涙」 「……?」 「藤堂と別れたんでしょ? 俺と付き合わない?」  ……きっと、いつもならビックリしてしまうような、ゆうの言葉も。今の俺には、全く響かなかった。なんだか、どうでもよかった。  俺は、タクシーがいつ来るのかと道路を眺めながら、ぽつりと答える。 「……俺、ゆうのこと、好きにはなれないと思うよ」 「ちなみに、どうして?」 「……俺は、藤堂以外の人は、やっぱりだめだし……それから、好きなんてそんなもの、今の俺のなかにはないから」 「ふうん」  一応、否定の言葉を言う。言った言葉に、嘘はない。ただ俺は、ほんとうに、どうでもよかった。なんだか、疲れてしまった。 「……いいよ。好きにして」  だから。そう、言ってしまった。  ゆうと付き合う、って、一体何をするのだろう。キスをされても、抱かれても、俺は何も感じないと、思う。もう、寂しさすらも、俺のなかにはないから、それを埋めて欲しいとすら、思わない。ゆうが、俺と付き合って、何かをしたいというのなら、それに合わせて何かをするだけ……そんな、関係になる。  早い所、死んでしまいたい。そして死を待つだけだから、何をされても構わない。藤堂のことを想ったところで、藤堂は俺のことなんて、きっとどうでもいいから、苦しむ必要なんて、ない。 「……なげやりになってるでしょ」 「……べつに」 「あはは、いいや、そのうち本気にさせてあげるから」 「……」  ゆうが、すうっと目を細めながら、俺の頬を撫でる。そして、俺に、キスをしてきた。

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