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一日中、ぼーっと、していた。なにも、やる気が起こらなかった。授業も、全く頭にはいってこない。どうでもいいと、思っている……それも、あるけれど。頭の中が、異常なくらいにもやもやとして、ほんとうに、中に何かが入っているんじゃないかというくらいにもやもやとして、全ての集中を、妨げていた。
結生が、視界の端にでもはいると。ぐっと心臓が痛くなって、呼吸がし辛くなった。結生も、なんだか、ぼんやりとしていた。あんまり席からたつことはなく、だからあまり視界には入ってこなかった。結生のことは好きだけど、今はあまり見たくなかったから、ほっとした。
そうしていたから、一日はあっという間に、すぎた。今日、自分がなにをしていたのかは、覚えていない。全てがなあなあに過ぎ去っていった。
「涙」
生徒会が終わると、ゆうがこっそりと声をかけてきた。みんなが生徒会室から出て行って、二人きり。席から立ち上がろうとした俺を、背後から、抱きしめてくる。
「涙……今日、俺のうち、こない?」
夕日が、机を、照らしていた。色は、わからないのに、その夕日の色だけは、わかった。紅い。机を、紅く、照らしている。
鐘の音が聞こえた。たぶん、これは、俺だけに聞こえているもの。頭の中でがんがんと鳴り響く、薄気味悪くて不快な鐘の音。重いその音と、紅い光。地獄は、こういう景色なのだろうか、そう思った。
「……うん、」
俺に手を差しのばす、ゆう。優しい、彼。でも、その瞳に、俺の心は、怯えている。それでも、かまわない。知らぬ間に、俺を殺してくれそうで、気が楽だ。
「……連れてって、ゆう」
全てを、夢も苦しみも全てを、忘れさせてくれそうな、この人の。手に、俺は、すがりつく。
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