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「……」 「あれ。おはよう、涙」  目をあけると、ゆうが、俺を見下ろしていた。何か……あったような気がするけれど、何も思い出せない。 「ゆう……」 「なあに?」 「死にたい」 「どうしたの? 急に」 「わかんない。なんとなく」 「うーん、死ぬなら近所の廃ビルから飛び降りるのがいいよ。俺の家で死なれても困るし」 「そっか」 「連れて行ってあげる」  記憶が……なにも、ない。目の前にいるのが、ゆうだということくらいしか、わからない。心の中は空っぽで、凄まじい虚しさが襲ってきて、不意に死にたいと思った。痛いし面倒だから死のうと決意することは今までできなかったけれど……今なら、いいかなって思う。  ゆうが、微笑みながら俺をベッドから起こした。そして、案内されるがままに、ゆうの後ろをついていった。

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