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第十三章 境界線へ、一歩

「……結生? あんた、最近夜更かししてるでしょ? 隈できてるわよ」 「えー……いや、勉強をしてて、」 「あんたが勉強するわけないでしょ! 友達とメールだかなんだかしてるんだろうけど、ちゃんと寝なさい!」  朝起きてリビングにいくなり、母さんは俺にそんなことを言ってきた。自分で鏡をみても、ちょっと血色が悪いかな……くらいしか思わないのに、母さんにはモロばれらしい。俺は……たしかに、寝不足だった。  涙が、俺に別れを告げてきたあたりから。慢性的に頭が痛くなったり、眠れなくなってしまったりと、そんなことが続いていた。  涙のことを考えると、胸の中に霧がかかったように、モヤモヤとした。涙が俺に別れようって言ってきたのは、俺のことを信じられなかったから。俺が、悪かったんだ。俺が、もっと、涙に寄り添えていたなら。……考えれば考えるほどに、苦しくなる。心が追い込まれて、そうすれば体も壊れていって、そして不調がさらに精神を圧迫して……酷い悪循環が、ここのところ続いていた。 「ちょっと、結生」 「……なに、あんまり朝からうるさくすんなよ、」 「何か悩んでるなら誰かに相談するのよ」 「……、うん」  母さんが、紅茶を淹れながら俺に声をかけてくる。  なんだ、見透かしているのか。  ティーパックを揺らしながらカップを眺めている母さん。俺のところは、見ていない。見られていたら、恥ずかしかったから、母さんがこっちをみていなくてよかった。母さんの言葉に、泣きそうになったところなんて、見られたくない。

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