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 現代文の時間。先生のお気に入りらしい文豪の小説だからか、授業にかなり気合いが入っている。でも申し訳ないけれど、そこの文章は前回も読んだところだから、ちょっと飽きた。 『――涙。今、君には空が何色に見えているの』  ゆうの言葉を思い出して、ふと窓の外を見上げる。空の色は、黒。心と体がばらばらで、上手く色がわからない。これがまだ顕在ということは。結生と一晩過ごして、大分心が穏やかになったような気がするけれど、まだ俺の病は治っていないらしい。もやもやと、何かを考えては、いないと思う。でも、うん、たしかに頭の中に虫が巣食っているみたいな感覚も、胸が痛くて呼吸がし辛くなる感覚も、治ってはいない。  また、いつ再発するかはわからないってことだ。  でも、ゆうはなんであんなことを聞いてきたんだろう。ゆうは、何を考えているのかわからないところがあるから、ちょっと、怖い。ただ、今朝の様子は少しおかしかったから、気がかりというか。どこかデジャヴを覚えるゆうの様子、でもどこでみたのかわからない。 「芹澤、次、読んで」 「あっ、はい」  ゆうのことを考えて、現実に引き戻されて。どこへ向かえばいいのかわからない意識。  ああ、どうしたらいいんだろう。

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