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第19話
「………神代、君?一緒に帰らない?」
そう話しかけてきたのは、陰キャラ雰囲気の人。名前は理雲というらしい。幸季は笑顔で答えた。
「本当!?誘ってくれて嬉しいよ」
「………それじゃあ、行こうか」
「うん」
はっきりしない喋り方だな、と思った。間があるというか、なんというか。もしかしたら考えているのだろうか。初対面相手に話しかけられるってことは引っ込み思案ではなさそうだし。
土間で靴を履き替えていると、後ろから理雲に誰かが声をかけた。
「おー、理雲が誰かと一緒にいるの珍し!」
「………フウ」
「こちらは誰かな?」
幸季は見ただけでわかった。ああ、この二人そうなんだって。知らない男と帰ろうとしている理雲に、風磨は嫉妬しているのだろう。その胡散臭い笑顔が何よりも証だ。
それに気づいたのか、理雲はさっと幸季の方に寄った。こいつ、さらに嫉妬を掻き立てているのか?
「………転校生の神代君」
「幸季でいいよ」
「………それじゃあ、幸季」
「それはそれは、家の理雲がお世話になってます」
とてもわかりやすい表情だ。目がギラギラしている。幸季は愛想笑いでやり過ごすと、三人で並んで歩き出した。
しばらく静寂が続いていたが、おもむろに理雲が口を開く。
「……………幸季ってさ、壮馬のこと好きなの?」
「そうだ……………っはぁ!?」
そのままうっかり答えようとするが、慌てて途中で質問の意味に気づく。理雲はちらりと風磨を見上げた。二人の目には黒い何かが浮かんでいる。
「へぇ………好きなんだ」
「別に好きじゃっ」
「否定しても、そんなに顔真っ赤にさせて。説得力ないぞ?」
風磨のニヤっとした顔が、さらにムカつく表情になっていく。頭にきた幸季はカッとなって叫んだ。
「あーもう!好きで悪いかよ!?」
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