18 / 19

第18話 笑み。

 みんなが騒ぐ中、理雲は一人窓の外を眺めていた。転校生ぐらいで騒ぐなんて馬鹿らしい。それでも嫌でも聞こえてくる会話。可愛い女の子がいい。かっこいい男の子がいい。  転校生は可愛そうだ。親か何かの都合で友達と離ればなれになり、勝手に容姿や性格の理想を押し付けられ、沿わなかったら呆れられる。  先生が入ってきて、妙にいつもより静かになる教室。 「みんなお待ちかねの、転校生を紹介するぞー。ほら、入ってきて」  ソワソワと期待が渦巻く中、扉を開けて入ってきた転校生。理雲は思った。可愛い女の子、かっこいい男の子。この人は両方クリアしているのではないか、と。 「はじめまして、神代幸季です」  りょこっと小さな身長。果たして160cmあるのか、というくらい。それに対して大きな瞳。可愛い男の子。わっと歓声が上がった。 「やべー!すっげー可愛い!」 「きゃー!こっち向いて!」  ホームルームが終わるとすぐに幸季はクラスメイトに囲まれて、質問攻めにあっている。身長、前の学校のこと、好きなもの、趣味。 「え、えっーと。一個づつ答えるからゆっくりな」  見ていてわかった。幸季という人は面倒みがいいな、と。緊張してタジタジと言葉を繋ぐ人がいれば、さらっと言おうとしていた言葉を察して答える。早口な人にも丁寧な対応をしていた。 「幸季さん!好きな人はいますか?」  そう尋ねたのは、このクラスで一番の高身長の長谷壮馬。おっちょこちょいで人懐っこいのが売りの人だ。 「え?好きな人…………んーいる、かな」 「え、誰ですか!?」 「それは秘密だよ。それよりもタメでいいよ。同じクラスなんだからさ」  無邪気に笑った幸季。理雲は目を丸くした。その笑いは照れ隠しではなく、確実に壮馬に向けられたものだった。

ともだちにシェアしよう!