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第18話 笑み。
みんなが騒ぐ中、理雲は一人窓の外を眺めていた。転校生ぐらいで騒ぐなんて馬鹿らしい。それでも嫌でも聞こえてくる会話。可愛い女の子がいい。かっこいい男の子がいい。
転校生は可愛そうだ。親か何かの都合で友達と離ればなれになり、勝手に容姿や性格の理想を押し付けられ、沿わなかったら呆れられる。
先生が入ってきて、妙にいつもより静かになる教室。
「みんなお待ちかねの、転校生を紹介するぞー。ほら、入ってきて」
ソワソワと期待が渦巻く中、扉を開けて入ってきた転校生。理雲は思った。可愛い女の子、かっこいい男の子。この人は両方クリアしているのではないか、と。
「はじめまして、神代幸季です」
りょこっと小さな身長。果たして160cmあるのか、というくらい。それに対して大きな瞳。可愛い男の子。わっと歓声が上がった。
「やべー!すっげー可愛い!」
「きゃー!こっち向いて!」
ホームルームが終わるとすぐに幸季はクラスメイトに囲まれて、質問攻めにあっている。身長、前の学校のこと、好きなもの、趣味。
「え、えっーと。一個づつ答えるからゆっくりな」
見ていてわかった。幸季という人は面倒みがいいな、と。緊張してタジタジと言葉を繋ぐ人がいれば、さらっと言おうとしていた言葉を察して答える。早口な人にも丁寧な対応をしていた。
「幸季さん!好きな人はいますか?」
そう尋ねたのは、このクラスで一番の高身長の長谷壮馬。おっちょこちょいで人懐っこいのが売りの人だ。
「え?好きな人…………んーいる、かな」
「え、誰ですか!?」
「それは秘密だよ。それよりもタメでいいよ。同じクラスなんだからさ」
無邪気に笑った幸季。理雲は目を丸くした。その笑いは照れ隠しではなく、確実に壮馬に向けられたものだった。
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