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第17話 予兆。

 梅雨の終わり、少しずつ蒸し暑くなってきた頃。今日も男子高校生の日々は元気だ。 「おっはよー!」 「きゃー!おはようございます結弦先輩」  後輩の可愛い女の子たちに囲まれて浮かれる結弦。それを後ろからギリギリと威圧的な雰囲気を出して見る空。その後ろで爆笑する雪兎と風磨。ぽかんと二人を見つめる志希と理雲。  女子たちが去っていくと、空は結弦めがけてパンチを繰り出した。さっとしゃがんで避ける結弦。自慢したようなドヤ顔になったが、すぐに空の蹴りがヒットした。 「妬かれるのは嬉しいけど、毎度毎度殴られるのは嬉しくないかな!?暴力反対!」 「うるせっー!」 「あはははっ!こいつ等本当に付き合ってるのか!?」 「っ……………」 「雪兎、笑いすぎて呼吸できてないぞ」 「…………こういう点では風磨と雪兎って似てるよね。…………やっぱり幼馴染だから?」 「「似てないから」」 「息ピッタリじゃん」 「志希煩い」  志希のほっぺたを伸ばす雪兎。笑っているものの怒りが見え隠れしている。それを見てさらに爆笑する風磨。みんないい性格をしている。  そんな時、理雲が空にこそっと言った。 「………カレシの浮気が心配ならマーキングしとけばいいのに」 「っ…………は、恥ずかしいだろ」 「そう?フウ、来て」 「ん、なんだって、うわっ!?」  理雲は風磨の襟をぐっと引っ張る。空に風磨のうなじを見せると、そこには赤いキスマークがあった。 「…………こういうとこならバレにくいけど、わかる人にはわかるからいいよ」 「あ!?いつの間に付けたんだよ」 「…………フウが寝てるとき」  ふいっとさり気なく視線を逸らす理雲。それに対して黒い笑みの風磨サン。風磨が掴みかかろうとすると、理雲は素早く避けて避難した。 「……………教室ついたから。じゃあね」 「あ、こら理雲!あいつ逃げやがった!」  後ろからそんな叫びが聞こえるが、無視して教室に入る理雲。風磨に鍛えられてきたその観察力で、すぐにいつもとクラスの様子が違うことに気づいた。  ざわついている、というか浮足立っている。話もヒソヒソと隠れるように話している者ばかりだ。不思議に思った理雲は隣の席の人に何があったのか尋ねる。すると意外な返事が帰ってきた。 「理雲知らないのか?このクラスに転校生が来るんだよ!」 「……………転校生?」

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