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第19話

指が絡んでていわゆる『恋人繋ぎ』なのは一体……い、いやいや、きっと意味なんか無い筈。だってこの人にとっては俺、雑種のノラ犬だからね! あれ、何か自分で言うと余計に虚しいってか凹みそう。 駄目だ、今すぐ寮帰ってぐっすり眠りたい。目が覚めたら今日の出来事全部、夢オチだったりしないかな……。 『皆さんに今ご覧頂いた映画は、書記さまにとってかけがえのない大切な存在について、分かりやすく説明したものです。勿論多少のフィクションを含みますが──』 ちょっと現実逃避してる間に、再び親衛隊長さんが舞台上へと進みマイクの前で話し始めていた。 再び、というのは集会を始める際にも挨拶していたからなんだけど。 「書記さまから重大なお知らせとお願いがあります」そう前置きし、 「先ずはこちらをご覧ください」と言われて始まったのがさっきの映画だ。 しかも多少のフィクションどころか、ほぼ全部フィクションだった。古今東西の色んな神話や物語を真似たような名場面がそこかしこに散りばめられていましたよ。 一流の人達に、多分すごいお金を使って、なんつー物を作らせたんだ。 あと、勝手に俺の写真や映像を混ぜるな。肖像権の侵害だ。 笑ってる(ように見える)犬の映像に、俺の笑顔写真を重ねたりしないでくれ。何だか本当に俺イコール犬みたいに思えるから、は、恥ずかしい。 特に尻尾ぶんぶん振ってる犬と、やたら機嫌の良いハイテンションな俺の動画を重ねた時なんかめっちゃ笑われてたし! うう……絶対、後でクラスの奴や平凡仲間な友達にからかわれる。くそーっ。 「わんわ、ん……!」 「う?」 グイッと恋人繋ぎの手を引かれ、気付けばそのまま壇上に立っていた。 もちろん手を繋いだままの俺と書記さまが。 え? え? そして書記さまへの黄色い悲鳴は分かるけど、俺にまで「うおぉ、わんわん来たー!」とか謎の掛け声は一体何。 とりあえず、ホール内どよどよしてるね。 改めて見渡せば当たり前だけど凄い人、人、人。その目が全部こちらを向いて── うわ怖っ。そういや俺こういう目立つのって苦手だった。今更ながら緊張しすぎて心臓から口が出そう……(※混乱中) .

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