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第22話

「キャンキャンうるさい。あんまり騒ぐと保健所に通報されちゃうぞ、野良だし」 「誰がノラ犬だ、俺は人間──」 「ああ、ごめん。そうか今は飼い主がいるもんな? 良かったなぁ人間になれて」 ………………イラッ。 などとくだらない話をするうちに、うっかり貴重な時間を無駄にしてしまった。 放課後の教室。机を挟み前後の席に座る俺たち。 目の前で機嫌良く笑う友人がムカつくけどこうしちゃいられない、今すぐ逃げなくては。 「わんわん!」 「うぐっ!?」 いきなり背後から抱きつかれ、圧迫された胃から何かをリバースしそうになる。 そして、もう顔を見なくても犯人は分かり切っていた。 「毎回何度も言いますが、彼が苦しんでます。力を緩めてください書記さま」 「あ、ご……ごめん、なさい……わんわん怒った……?」 「いやいや、ノラは血統書付きに比べて丈夫だからそれくらい平気ですよ。な、雑種のノラ犬?」 「それもそうですね。では、わんわん君の捕獲も無事に済んだことですし生徒会室へ行きましょうか書記さま」 「わんわん、可愛い……!」 「おー、今日も溺愛されまくってるなぁノラわんわん。生徒会補佐の仕事、頑張れよー」 書記さまにホールドされたまま教室から連れ出されてく俺に、手を振る友人。 しかもすげー笑顔で。 最後にそっと親衛隊の子が「これ、お礼のビデオです」と紙袋を奴に手渡すのが見えたけど。お礼ってなんだ? 直後、廊下にまで友人の 「ノラわんわんの見張りは僕に任せたまえ! きゃふぅぅーぅ♪」 という台詞と奇声が響いて来る。 あ、あいつ俺を売りやがった。 多分だが奴が入手出来ない、大昔のお宝アニメ映像かなにかと引き換えに。 くそ、裏切り者め! 生徒会室への道すがら、ほほえましそうに見てくる人や写真を撮ったり声援を送ってくる人など様々。 もう慣れたけどね。 どうやら、書記さまと俺が一緒の写真を肌身離さず持ち歩けば願い事が叶うらしい。 ……って噂は友人から聞きました。 いや叶わないから絶対。 本気でアホばっかりだよ、この学校。 .

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