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第25話
久々の解放感を味わって、
今にもスキップしながら鼻歌の一つでも披露しちゃいそうな状態、のわんわんだった。
が、そんな時。
生徒会(会長)より緊急のお知らせと称した、校内放送が流れだす。
『あー、全校生徒に告ぐ。書記のノラが逃げ出した。誰でも良い、ノラを見つけ次第その場で無傷のまま捕獲しとけ。んで生徒会に連絡しろ。
捕まえた奴への謝礼は後日、俺様が直々に出してやる。とにかく早い者勝ちだからな、つーことで本気だせテメーら!』
…………それはもう一瞬で学園中が、わんわんパニックである。
もともと人のいない場所を選んで行動していたのは不幸中の幸いだった。
しかし、相手は全校生徒。
色めき立つ会長親衛隊をはじめ部費アップを狙う諸部員たち。
だがわんわん確保のスピードを最優先にした結果、手柄(謝礼)の独占は諦め、まず文化部が情報を収集し運動部が現場に駆けつける――という意外な連係プレーが誕生した。
これにより放送後まもなく、体力自慢のいかつい連中が雄叫びをあげ、集団でわんわんを追っかけ回し始めたのである。
「見つけたぞ、わんわん!」
「やった、これで部費アップだ」
「大人しくしろよ〜」
「よし、捕まえろ!」
「ひいぃッ!?」
はたから見ればさながらリアル鬼ごっこ。
身の危険を感じたわんわんが、死に物狂いで逃亡するのも当たり前。
しかし火事場のなんとやら、意外にも逃げ足の速かったわんわん。まるで野生の動物かと思うほどに、走る走る。
「やややだぁぁぁ、こっち来るなーッ!」
「くっ、待てわんわん!」
「お、おい何か異常に足速くねーか、わんわん」
「もう駄目だ、筋肉が重くて走れねぇ……」
「ゼェハァ……わ、わんわん……うちの部に欲しい逸材だ!」
「な、何をぉ!? こっちだってわんわんがいれば全国制覇も夢じゃねーぞ!」
「うるせぇ、わんわんは俺らの部が頂くんだよっ」
「わんわん、お願いだからちょっと待ってくれ〜!」
……という鬼側の声は耳に入らず、ひたすら逃げ続けるわんわん。
後日、壮絶なわんわん勧誘バトルが繰り広げられるのだがそれはまた別の話である。
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