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第32話 ワンコの秘密/前編/知りました。

「あ、そういえば。どうして親衛隊の皆は、俺と書記さまをすぐに引き合わせたりしなかったんですか?」 放課後の生徒会室。 やたらと豪華な来客用ソファーに座りお菓子とジュースを口にしながら、そう尋ねた相手は書記さま親衛隊長さんだ。 一週間ほど前、いきなり生徒会役員補佐となった俺。 けれど頭の出来も容姿と同様、仕事なんて簡単な雑用くらいしかこなせない……所詮は平凡である。 皆様に飲み物を配ったりコピーとったり部屋の掃除をしたり。 「そんなことしなくて良いですよ」 「そうだよぉ、わんわんはまったりしてなよー」 なんて言われたけど仮にも『補佐』となった奴が遊んでいるわけにはいかないでしょ。 というか、そうしないと書記さまに抱きつかれっぱなしでチューされたり体中あちこち撫で回されたり、他の生徒会の皆さまが見ている前でひたすら恥ずかしい思いをすることになるのだ。 が、さっきも言ったように俺に出来るのは僅かな雑用のみ。 結局残り時間のほとんどを書記さまの膝の上で過ごす毎日を送っていたりする……うぬうぅ。 ところが今日は珍しく書記さまの仕事がはかどらない(ていうより会長さまに渡された書類の量が普段より多いかも?)らしく、それが終わるまで勝手に寮へ帰れない俺は、迎えに来た隊長さんと暇潰しの会話を始めたのだった。 え、勝手に帰れない理由? 俺が帰ろうとすると書記さまも一緒について来ちゃうんだよ。仕事は放棄で。 叱られようが泣きつかれようが全く言うことを聞かない書記さま……。隊長さんや庶務・副会長さまにも頼まれ、仕方なく俺は書記さまの仕事上がりを待つようになった。 それはともかく、何故か向かい側のソファーには既に仕事を終えた会計と副会長さま、俺の隣に座る隊長さんのさらに横に立つ庶務さまがいますけど。会長さまは自分の仕事机に肘をつき意地悪そうな笑顔を浮かべてるし。 涙目の書記さまだけがチラチラこっちを窺いながらお仕事してますよ。 うわ……絶対あれ、耳垂れちゃってるよなぁ。 くっ、頭なでなでしたい、とか考えたら負けだ我慢だ俺! .

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