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第33話

という状況下で冒頭の会話に戻るわけですが。 「うーん、やっぱり流石に最初は『わんわん』君の内面とか人物調査が必要かなと思って。いくら書記さまの希望でも、対面させる相手が問題有りの危険人物だったら困りますしね」 「へ、へえ……」 ニッコリ微笑む隊長さん。 つまり俺は人間性を疑われ観察されていたのか。 最終的に安全を保証されたのだとしても、そーゆーのはちょっと嫌だな。 「ああ、隊長さんってワンコ書記の側仕えだもんね。そっかそっか、下手に家柄が良過ぎると主従そろって苦労するっしょ。学園内でも色々と大変そーだよねぇ」 …………ん? 「ソバヅカエ? シュジュー?」 「あれ、わんわん知らないの?」 会計さまの言葉に頷けば、芝居がかったやや大袈裟な身振り手振りで驚かれる。 おまけに他の皆様もびっくりしてるし。 え、何で。まさか知らない俺が変なの? 「あの、わんわん君。一応確認しますが、私達の家柄について何かご存知でしょうか」 「い、イエガラ」 副会長さまの問い掛けに、俺の脳内が慌てふためく。 ちちちょっと待てよ。 えーと、とりあえず平均家庭な俺と違って、すげぇ金持ちらしいという噂は知ってるぞ。 確かどっかの大会社の後継ぎ予定やら親が大きな総合病院の経営者だったり、他にも由緒正しい名家のご子息様とかで。皆様それぞれ、生まれも育ちも平凡な俺たち庶民の生活とは掛け離れた(同じ学園で過ごせるのがそもそもありえない)奇跡の存在らしい。 情報元は平凡仲間の友人Aだ。 ――うん。 考えてみたら噂ばっかりで、本当のことは全く知らないや。 ところで皆様が噂通りの人達だとすると、大丈夫なのか俺。 今はソファーに座ってるから良いけど、本来『奇跡の存在』な書記さまの膝に乗ったりしちゃダメだよね。絶対あとで由緒正しい(らしい)家の人に怒られる。 ま、まさか不敬罪とかに問われて「切腹しろ!」なんて言われたりしないよね? う、嘘っ、どどどうしよう。 「まあ、俺らの家についてはあんま深く考えなくても大丈夫だよぉ。むしろ知らないわんわんの方が俺は好きだしー」 顔を青くする俺に、笑いかけてくれた会計さま。 .

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